昨季まで社会人野球のクラブチーム、EMANONBBC戸塚でプレーしていた相模原出身の伊藤克投手が今春から、独立リーグの四国アイランドリーグ(IL)plusに挑戦の場を移す。昨年11月のドラフト会議で徳島から8位指名を受けて入団を決めた。一度は野球の道を離れた20歳のルーキーが夢に向けて歩み始めた。
ことし1月に徳島県内で行われた新入団会見。「いいプレーをしてチームに貢献したい」と意気込んだ右腕の目は輝きに満ちていた。
小学1年生の時に野球を始め、田名中時代は硬式野球チームの相模原リトルシニアに所属。2年時にはエースとして、140キロを超える直球を武器にチームを全国大会にも導いた。
将来を嘱望されたが、次第に野球への情熱を失っていったという。強豪校からの誘いを断り、家庭の経済状況から高校に進学しなかった。卒業後は横浜市内の建設会社に入社した。
元野球少年の心が再びグラウンドに向かったきっかけは、かつてのライバルたちの姿だった。
17歳の春。テレビには甲子園で躍動する横浜高ナインの姿があった。そこには中学時代に対戦した選手もいる。「もう一度、野球がやりたい」。知人の紹介でEMANONBBC戸塚に入った。
平日は仕事、休日は練習というせわしない日々にも「喜びしかなかった」と言う。徐々にブランクを取り戻し、入団2年目の昨季はエースへ。2完投を果たして8強入りに導いた昨年3月の春季県大会で「またプロを目指してもいいのかもしれない」と子どもの頃の気持ちが再燃した。11月に四国ILplusのトライアウトに参加し、見事合格した。
昨年10月のNPB(日本野球機構)のドラフト会議で徳島からは、福永春吾が阪神6位、木下雄介が中日育成1位の指名を受けた。伊藤も「もちろん(NPBに)行きたい。みんなより倍練習して短期間でいかに結果を出して注目されるかが大事」と夢に向かって気を引き締める。
今月1日にはチームが始動。3月には徳島県内で8日間の春季キャンプが控える。「やってやろうという気持ちしかないですね」
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いとう・すぐる 田名中(相模原リトルシニア)-EMANONBBC戸塚。右投げ右打ち。178センチ、88キロ。20歳。相模原市出身。