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選抜高校野球:東北高の神奈川出身球児、苦難克服し“春”到来

高校野球 | 神奈川新聞 | 2011年3月28日(月) 23:39

 「あの日」から17日。選抜高校野球大会が行われた兵庫・甲子園球場のアルプススタンドを埋め尽くした応援団から、一球に、一打に声援が飛んだ。「がんばれ! 東北。がんばろう! 日本」と記された小旗が揺れる。被災地・宮城からの応援だけでなく、関西の高校生や少年野球チームなど、平日にもかかわらず約2万7千人が駆け付けた。

 東北高の主将・上村健人投手は相模原市立緑が丘中出身。茶谷良太三塁手は茅ケ崎市立浜須賀中出身だ。ともにシニアで鳴らした有望選手。実力を見込まれて強豪・東北高に進学した。

この日、スタンドには両選手の両親の姿も。ともに震災以降は選手たちと会えておらず、久しぶりの息子の姿を、グラウンドに追った。

 震災直後、遠く離れた息子たちの安否が気が気ではなかった。上村選手の父・一夫さん(42)は「数日間、全く連絡が取れなかった。チームと一緒にいるから平気だろうと思っても、やっぱり心配で」と振り返る。ようやく連絡がついたのは地震3日後。電話口の息子は「大丈夫。自分のことは気にしないで」と、冷静に答えた。

 学校周辺の被害は小さかったが、寮は停電。地震当日の夜から選手は近くの中学校へ避難し、そこで3日間過ごした。その間は給水活動や炊き出しなどを手伝い、もちろん「野球どころではなかった」と茶谷選手。「学校から車で20分ぐらいの海岸には、遺体がいっぱいあると聞いた。それを思うと…」と口をつぐんだ。

 大阪入りしても、気丈に振る舞い続けた選手たち。殺到した報道陣にも誠実に対応し、被災地の代表として「頑張ります」というメッセージを送り続けた。

 23日の開会式で息子の姿を見掛けた茶谷選手の母・真知子さん(47)は、「野球に集中させたかったから」と、あえて声を掛けなかった。迎えた試合当日。真知子さんは「大会開催に賛否はあったと思う。でも(仙台にいる)チームメートの母親たちが世話をしてくれたから(甲子園まで)来られた」と、大会出場の意味をかみしめた。一夫さんは「精神的につらいと思うけれど、頑張って」と声援を送った。

 試合は大差で負けたものの、上村選手は「被災地の人、応援してくれる人に支えられてこの試合ができた。何かが伝わったらうれしい。胸を張って帰りたい」。茶谷選手は「もしかしたら一生に一度の甲子園かもしれない。うれしかった」と、張り詰めていた緊張を解いた。

 ともかく、大好きな野球を、憧れの甲子園球場でできた。大きな苦難に直面した球児たちに、“春”が訪れた。【】

 
 

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