プロ野球のキャンプが始まった。横浜高時代に指導した藤平尚真(楽天)、柳裕也(中日)の2投手も夢をかなえ、仲間入りした。
藤平を見たときは、久しぶりにすごいピッチャーが入ってきたと思った。松坂以来と言ってもいい。心構えもしっかりしていた。
ところが、速球投手にありがちな右肘の成長痛に悩まされた。本来はすぐにでも使いたかったが、将来を考えて無理をさせなかった。1年のときはほとんど投げさせず、基礎体力づくりに力を入れさせた。
順調に回復してきたと思ったら、今度は2年の春に練習試合で死球が肘に当たって投げられなくなった。ここでも無理をさせずリハビリと下半身強化に努めた。彼も黙々とトレーニングを積み、体づくりは十分にできている。
実戦経験が少ない分、伸びしろはある。新年のあいさつでメールが来たから「張り切りすぎるな。オーバーワークにならない中で最大の努力を」と助言した。
一方、柳は入部当時、それほどすごい感じはなかった。動きが俊敏なわけではない。球が速いわけではない。でも、ハートは強かった。父親を小学生のときに亡くしていることも影響していると思う。
練習に取り組む姿勢が他の選手と違った。私が何も言わなくても、できるようになるまで繰り返していた。最近ではこれだけ真摯な選手はいない。最初は3番手の投手だったけれど、いずれは彼がエースになるだろうと確信した。素質に恵まれなくても、努力を重ねればドラフト1位選手になれるということは他の選手の励みにもなる。
ただ、今のままでは大学で通用してもプロでは厳しい。バッターとの駆け引きなどあらゆる面でレベルを上げなければならないだろう。しかし、彼だったらできると信じている。ぜひ2人の活躍を球場で観戦したい。プロ野球を見る楽しみがまた増えた。
(渡辺元智・横浜高野球部前監督)