横浜のエース藤平は、歓喜の瞬間を右翼の守備位置で迎えた。「甲子園の切符をやっと手にできた。2年半かけて、やっとスタートラインに立てた」。名門を3年ぶりの甲子園に導いた背番号1はマウンドへ全力で駆け寄り、ナインと熱い抱擁を交わした。
決戦も初回から最速147キロのストレートで押した。今夏封印してきたフォークボールも解禁し、6試合60得点の慶応打線を寄せ付けない。8点リードの七回に3点を許したものの、8奪三振で夏の頂点を引き寄せた。「去年はベンチ前で東海大相模の校歌を聞いていたので、今年は自分たちが校歌を歌って優勝を実感しました」
右腕にとって甲子園への憧れが、目標に変わったのは7年前だった。2009年の選抜大会。家族と観戦に出掛け、ネット裏から見た岩手・花巻東の菊池雄星(西武)の剛速球に目を奪われた。「150キロのボールというのを初めて見て、自分もこの舞台にという思いが生まれました」
中学時代に千葉市シニアで全国制覇し、U-15(15歳以下)日本代表で活躍。横浜でも1年秋からエースナンバーを背負ってきたが、昨夏は決勝で東海大相模に打ち込まれ、昨秋は関東大会の常総学院(茨城)戦で痛恨の一発を浴び、甲子園を目前に涙してきた。
エース藤平が、ついに聖地のマウンドに立つ時がきた。「神奈川で優勝できましたが、まだ全然満足できる投球はできていない。甲子園では全力で投げたい」。スピードボールが一番映えるマウンドで、磨き上げた最速152キロを披露する。