188センチの恵まれた体から投げ下ろす速球は今春、最速148キロを記録した。横浜創学館の望月惇志は、プロ12球団のスカウトがマークする大型右腕だ。
細身の長身をマウンド上でバランスよく使って腕を振り切り、球のリリースは打者に近く感じられる。昨秋県大会では1試合16奪三振。「打者が待っていても、空振りしてしまうストレートが理想ですね」
勝負の夏に向け「150キロ超え」を公言している。ただ、常に自らに問い続けてきたのは「神奈川の上位で通用するストレートの質」だという。
今春4回戦の桐光学園戦。冬のトレーニングや走り込みで威力をアップさせた自慢の速球が無残にも打ち込まれた経験が、進むべき道を示してくれた。質を伴った150キロの追求。夏を勝ち抜くため、球数を減らすことも急務だった。
春以降、「ただ強く振っていた」というフォームを改造。右腕の高さや、振り上げる軌道を意識することでフォームを安定させ、イメージ通りの切れと制球力が身についてきた。縦横2種類のスライダー、カーブに加えて、チェンジアップを習得したのも速球をより生かすためだ。
互いに勝ち進めば、準々決勝で優勝候補の東海大相模とぶつかる。昨夏、今春の神奈川を制した吉田、小笠原の両投手は「気にはなる存在」。同じ右本格派の吉田との投げ合いを切望する。
森田誠一監督(50)は過去の教え子たちと比べ、プロ生活10年を超える石井裕也(日本ハム)に匹敵する将来性を感じ、「練習で手を抜かない姿勢」がパ・リーグで首位打者を争う秋山翔吾(西武)を思い出させるという。
これだけの逸材が甲子園常連校に進まなかったのは、中学3年時に肩の故障で投げられず、その存在が全国レベルでは知られていなかったから。「投げていない自分に声を掛けてくれたのが創学館だった。最後は自分がやらなければという覚悟でいく」。150キロエースが初の甲子園に導く。
もちづき・あつし 投手3年。芹が谷中(横浜南ボーイズ)出身。188センチ、83キロ。右投げ右打ち。