攻め抜いた。その始まりを告げたのは、東海大相模の攻撃野球を象徴する2番の最強打者。打率5割超と打ちまくっている杉崎だった。
一回1死無走者。内角高めの直球をコンパクトに振り抜く。打球はあっという間に右翼スタンドへ。これが合図だった。
以降も得点を重ね、とどめも背番号6だった。八回にこの試合、2本目となる右中間への2ラン。1985年の日大藤沢の大会記録に並ぶチーム11本目の一発に「自分の本塁打で並んだのは知らなかった」と頬を緩めた。
3本塁打を含む5本の長打攻勢。それでも打のヒーローは「ホームランを狙っている人間はいない」とやんわりと否定する。豪打は門馬敬治監督(44)が掲げるアグレッシブ・ベースボールの一側面でしかない。
むしろ5安打に2盗塁を絡め、向上のエース高橋に重圧をかけた六回の4点に神髄がある。準々決勝でソロを放ち、この日4点目のホームを踏んだ主将平山は言う。「一発よりヒットでつないで点を取れた方がうれしい」
ハイレベルな投手陣が脚光を浴びながらも、かつて甲子園を席巻した故原貢氏が掲げた東海の攻撃野球は継承され、息づいていた。「僕が今やっているアグレッシブ・ベースボールの原点は、おやじさん。攻めて攻めて攻めまくる。だから最後の最後まで手を緩めなかった」。19安打13得点の猛攻に、門馬監督は万感の思いを込めていた。
「自分で始まり、自分で締める大会にする」。選手宣誓を担い、そう誓っていたキャプテンはしばしの歓喜の後、すぐ笑顔を消した。「まだスタートライン」。ことしのチームTシャツの背中には「奪回」の文字。神奈川の頂点は奪い返した。次は日本一を取り戻す。
東海魂持って戦った 巨人・原辰徳監督(東海大相模OB)の話 激戦区の神奈川で、本当にいい戦い方で甲子園に出場することができて、大変喜んでいる。東海魂をしっかり持って、選手は戦ったんだと思う。
もっと高いところへ 巨人・菅野智之投手(東海大相模OB)の話 目標はもっと高いところに設定していると思う。甲子園優勝を目標にまた新たに頑張ってほしい。【神奈川新聞】