堅実な野球を貫いてきた日大が、大一番では派手なグランドスラムでたたきのめした。選手が「格上」と口をそろえる桐光学園との一戦。決めたのは8番を打つ川口の一発だった。
押し出し死球で同点に追いついた直後だった。2番手佐々木の代わりばな。「初球から行くと決めていた」。甘く入ったストレートを思い切りよく振り抜くと、観衆のどよめきの中、打球は左翼芝生席で大きくはねた。「信じられない」。高校初ホーマーは人生初の満塁弾。背番号16はナインの手洗い祝福に笑顔で応えた。
県大会進出決定後、急きょ打撃マシンをレンタル。準決勝で桐光学園との対戦が決まると、右腕山田の直球に絞り、145キロに合わせて打ち込んだ。「打ち負けないように備えてきた」。ヒーローは終盤には自ら火消し役として登板し、2死一、三塁の九回も三振に仕留めた。
日大ナインを鼓舞する出来事もあった。1日にJR横浜線の踏切内で横たわる男性を助け、亡くなった村田奈津恵さん(40)の父(67)は同校OB。何度も野球部の応援に駆け付けていたという。面識もある伊藤謙吾監督(40)は「チーム全体が勇気をもらっている」と話す。
5年ぶりに関東切符を手にし、次は初優勝を懸けた32年ぶりの決勝。川口は「横浜も格上の相手。謙虚にチャレンジャーとして戦う」と力強く言った。
●桐光学園、序盤の大量失点重く
桐光学園は序盤の大量失点が重くのしかかった。先発山田が制球に苦しみ、三回2死一、二塁から連続死球で同点を許して降板。満塁の窮地を任された2番手の佐々木は初球をレフトスタンドに運ばれた。
一方、打線は12安打も11残塁。六回1死満塁も1得点に終わるなど得点のチャンスを大きくは生かせず、逆に四、七回の中盤以降に適時打で失点したのも痛かった。野呂監督は「センターに打ち返す意識を徹底させていたのだが、流れが向こうにいっていた。これも勝負のあやかな」と淡々と振り返っていた。
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