
青い空の下に、泥だらけのユニホームが並ぶ。カキーンと打って、グラブを差し出して、ベースへ滑り込む。校舎からは夏のスタンドを彩るダンス部の、応援練習の音がうっすらと聞こえてくる。磯子の主将石田倫哉はいま、グラウンドで続いてきたこの何でもない「放課後の風景」が、とてつもなくいとしい。
創部42年目の磯子にとって、100回目の記念大会が本当に最後の夏となるからだ。「自分たちの代で部の歴史が終わるのは、正直悲しい」。キャプテンの目にはもう、涙が浮かぶ。
3年が入学する前の2015年、県から通達があった。県立高校改革により20年春に氷取沢と統合、18年度には新入生の募集も停止する-。当時就任2年目だった吉野哲也監督(52)は「何を言っても変わらないのかと思うと、無力感があった」。その年の夏は9年ぶりに初戦突破し、3回戦進出。まさにこれから、という時だった。