
1998年の甲子園春夏連覇をはじめ、横浜を二人三脚で名門に押し上げ、長らく神奈川高校球界をけん引してきた前監督の渡辺元智さん(73)と、元部長の小倉清一郎さん(74)の対談が初めて実現した。
二人の出会いに始まり、苦労話や知られざる秘話、そしてこれからの高校野球への思い…。今夏に迎える100回記念大会に合わせた連載「K100 神奈川高校野球」もいよいよ大詰め。大トリにふさわしい名将と名参謀の最強コンビが二人にとっての高校野球を語り尽くした。
小倉清一郎 人見抜く力すごかった
渡辺元智 小倉はものすごく貴重
-二人の出会いは60年近く前の1960年。横浜高の同級生で、同じクラスになったこともある。互いの第一印象はどうでした。
渡辺 私は平塚(の中学)から、言うなれば田舎から出てきたわけですよ。周りはトッポイ連中ばかりで、エネルギーの余ったやつばかりだった。彼(本牧出身の小倉)は地肩が強く、要領も良く取り組む姿勢も違っていた。
小倉 (渡辺は)口数も少なく、とにかくまじめ。じーと我慢するような。俺はいい加減だったけど、そういう面で一目置いていた。
-小倉さんが渡辺さんの自宅に泊まったり、仲が良かったそうですね。
渡辺 性格そのものは違うのだけど、非常にウマが合った。
小倉 監督(渡辺)がいると俺が素直になれたというか、ヤンチャできなかったね。3年夏の大会は打率を競った。お互い全試合でヒット打ったけど、俺の方が負けたな。例えば5000メートル走だと、だいたい監督が1位で俺が2位か3位だった。最後までついて行くんだけど負けちゃう。
卒業後、渡辺は神奈川大に進み、68年秋に28歳の若さで母校の監督に就任。小倉は東京農大から社会人野球を経て、静岡・東海大一高(現・東海大静岡翔洋)でコーチに就いた。数年後、小倉が同高を退任して神奈川に戻ってきて2人は偶然再会する。