
最大の「もしも」と、財産
あと1勝だった。勝井直幸(73)は向上を2度夏の決勝まで導き、負けた。栄光は鼻先をかすめて去って行った分だけ、今も胸を焦がす。
最初は1976年だった。原辰徳(前巨人監督)らの東海大相模に、0-19という決勝の最多得点差で3連覇を許した。「相模の黄金期の中でも強いチーム。正直勝てる要素は一つもなかった」
そこまでエース小清水薫が神がかっていた。第1シードの藤沢商との3回戦では逆転サヨナラ2ランを放ち、準決勝では多摩をノーヒットノーランに抑えた。「そんな奇跡が相模戦でも」と思ったが、初回で5点を失い戦意を喪失した。計26安打を許し、逆に向上は1安打のみ。「こっちはひたすら、『よくやった』でしたよ」。監督になって7年目の夏だった。
