2016年夏の甲子園で実に54年ぶりとなる優勝を果たし、作新学院(栃木)を古豪から再び常勝校へと押し上げた小針崇宏(34)は、慶応の前監督にして「高校野球マニア」を自認する上田誠(59)が、一度語り合ってみたかったという若き名将だ。神奈川にとっては実にやっかいな復活劇を遂げた名門を訪れた。
小針は筑波大を卒業した2006年に母校に戻ると、その秋から弱冠23歳にして指揮を任された。1962年には史上初の甲子園春夏連覇を果たし、その後も怪物と呼ばれた江川卓(元巨人)を輩出した強豪は、センバツには出ていたものの、夏の甲子園から28年も遠ざかっていた。
上田 こう言うと失礼だけど、かつては関東大会で栃木代表と当たると、心の中でラッキーと思っていた。
小針 私たちが2011年の秋に初戦を突破するまで、栃木県勢は「関東大会20連敗」という不名誉な記録があった。そう思われても仕方ないですよね。
上田 それが今はむしろ、13年に甲子園で優勝した群馬の前橋育英や健大高崎を含めて「北関東の時代」と言ってもいいくらい。ちょっと神奈川の時代じゃないぞと。
小針 そんなことはないです。うちは横浜や東海大相模、桐光学園、慶応、横浜創学館、桐蔭学園と練習試合をやらせてもらっていますが、神奈川の全体の特徴として一人一人の打者の振りの強さを感じます。