日大藤沢4-1鎌倉学園

九回2死二、三塁、鎌倉学園のエース作野が投じたスライダーがはじき返され、右中間へと抜けていく。夏の扉はこの夏も届かなかった。
129球を投げ抜いた5回戦から中1日。先発マウンドに作野の姿はなかった。後半勝負とにらんだ竹内智一監督(37)が指名したのは2年生右腕荒川。鎌学投手陣が放つ矢は確かに相手打線に刺さっていく。
序盤を最少失点で切り抜けると、2番手には左腕の本多を送り出し、競り合いに持ち込んだ。そして六回、背番号1は自らマウンドへと歩み出していた。
「頼もしいのひと言。投手陣が声を掛け合いながら成長してくれた」。指揮官の目には敗戦の悔しさとともにかすかな笑みも浮かぶ。南神奈川大会決勝まで駆け上がった昨夏から一転、新チームは厳しい秋を迎えた。地区予選、県大会初戦でいずれもコールドで敗れた。
夏と秋に味わった自信と挫折は投手陣の底上げを促す。「一球の重みを意識してやってきた」と作野。本多も言う。「作野と競い合う中で自分も成長できた」。強豪への道を再び歩み、第1シードで臨んだ夏だった。
「去年の夏、ここで戦った経験が財産になった」と振り返る作野の歩みを間近にしてきたからこそ、荒川は誓いを立てる。「作野さんのように、誰からも信頼される投手になって戻ってくる」。古豪復活へ。継がれる思いがさらなる推進力となる。