投げるたび成長

横浜隼人の左腕・佐藤一磨は、苦渋を味わうたびにたゆまぬ努力を重ね、ゆっくりとその才能を開花させてきた。
「自分の真っすぐは来ると分かっていても打てない。どのピッチャーにも、投げられない」。188センチの長身から繰り出す剛球は、つい1週間前に最速145キロにまで達したばかりだ。
県内の同世代左腕でも、横浜・及川雅貴や桐光学園・冨田冬馬らの陰に隠れ、ほとんど無名の存在だったが、水谷哲也監督(54)は目を見開いて「スケールの大きい投手。一球一球、一秒一秒、投げるたびに伸びている」と言う。
昨夏はメンバー変更で開幕直前にベンチ入りしたが、17年ぶりの初戦敗退で出番はなかった。秋の新チームからエースの座をつかんだが、秋春続けて県大会3回戦で姿を消した。どの試合も投手陣は3失点以内に抑えており、課題は打撃力にあった。悲運のエースは、その力を存分に発揮する舞台に飢えてきた。