悔しがる様子を見せず、左翼席上段へ打ち上がる大飛球を見送った。八回1死二塁、相手主砲に2本目のアーチを喫した日大藤沢の左腕新村は「いい打者なのは分かっていた。打たれても仕方ないと思って投げたら、本当に打たれました」と淡々と受け入れた。
東海大相模の森下とは中学硬式の戸塚シニアでともに汗を流した間柄。「中学の時から抑えた記憶がないくらい、いいバッター」を相手に回し、ベンチの伝令は「勝負に行け」。少し甘く入ったとはいえ、初回に続き全力のストレートを運ばれたから後悔はない。
強打の東海を相手に、多少の失点は覚悟していたという。本領発揮は四回以降を4イニング連続無失点の投球。力感あふれるフォームから生命線の直球を膝元に沈め、ゴロを打たせた。冬から1日100球以上の投げ込みを課してスタミナをつけ、130キロ台中盤の球速は最後まで衰えなかった。
ともに2年生。神奈川から2校が出場する来夏の100回記念大会では、再び対峙(たいじ)するのか。それとも、ともに甲子園で輝くのか。
来年、森下と対決したら-。「もっと球速を上げて、今度は直球で詰まらせたい」。夏は3年連続でタテジマに敗れた3年生の悔しさも胸に、好左腕が熱戦の舞台を去った。