延長十一回裏無死一塁。3番喜友名へのサインは、3球目で犠打からエンドランに切り替えられた。
「選手に攻めろと言っておいて自分が弱気になってはいけない。ここは動く場面だと」。門馬敬治監督(47)の意図を主将もくみ取った。
「三塁がバントだろうと前に出てくるので、強く転がせば抜けるかと思った」。たたきつけたゴロが三塁手の頭上を越え、一、三塁。最後は主砲森下が中前へはじき返し、終止符を打った。
豪打で春の神奈川を制したタテジマ打線が向上の飯田にほぼ完璧に封じられていた。十回までわずか3安打で11三振。
ただ、勢いづく向上にも一線は越えさせなかった。1-1の九回、先頭のゴロを三塁門馬がトンネル(記録は安打)。続くバントが小飛となると、捕手山田翔が一走を見てバウンドさせ併殺に切った。延長十一回にも先頭の遊ゴロを小松が悪送球。無死二塁を迎えたが、送りバントを主戦安里が三塁封殺した。ベンチでは「受けるんじゃなく、攻めて守れ」と声が飛び交っていた。
崖っぷちに立たたされた一戦を制し、闘将は言う。「夏は必ずこういう試合がある。険しいところを、まず一つ越えられた」。勝てばこそ、これを夏の通過儀礼と言える。