第99回全国高校野球選手権神奈川大会第3日は12日、小田原球場など10会場で1回戦20試合を行い、大楠が17年ぶりの勝利を挙げたほか、桜丘が強豪の藤嶺藤沢を破り、2回戦へ進んだ。
大楠は2点を追う八回に打線が6短長打を集中させ逆転、九回にも6点を駄目押しし、12-7で大和東に勝った。桜丘は四回に打者11人で7点を先行し、追いすがる藤嶺藤沢を8-5で振り切った。
平塚湘風は右腕諏訪偉折(3年)が三塁を踏ませずに大和西を完封し、4-0で快勝。伊志田の左腕北村幸大(3年)も14三振で被安打3と好投し、旭から5-0の完封勝利を挙げた。
第4日は横須賀スタジアムなどで1回戦20試合を行う。
我慢の先 歓喜あり
17年ぶりとなる1勝に、大楠ナインは喜びを爆発させなかった。「今年は勝てると思っていたし」。主将加藤には自信があった。
同点の五回、満塁弾を浴びた。山崎滋彦監督(40)は思った。「今までならあそこから崩れてコールド負けだったな」。今年は違った。
エース嶋貫はすぐに切り替え、打線も粘った。八回、4番加藤の左前打から6短長打で3点を奪い逆転した。
ずっと勝てなかった。2007年には0-53という、神奈川大会のワースト記録も作った。「途中で諦めちゃう。人数が足りなくなり、また勝てない」。指揮官は歴史を変えるには、何より夏の1勝だと思っていた。
このチームの変化を主将はこう語る。「チームが倒れそうなときに自分や嶋貫を中心に踏ん張れた」。報われないかもしれない努力や我慢の先に歓喜があった。
指揮官も言葉を重ねる。「部員不足で出られなかったこともあった。毎年、野球が好きな子たちが頑張って、歴史をつなげてくれたおかげ」
17年ぶりの勝利は、ちょうど17安打でもぎとった。誰かの1本ずつが、つながった結果だ。
大和東 主将、恩返しの満塁弾
大和東の主将松本が満塁弾。左翼席へ高校通算13本目のアーチを架けたが後が続かず、試合は逆転負けした。
1年の時、「試合に出られなくて、悔しくて」と一度野球部を辞めたが、復帰後は主将を任せられるほど成長した。「戻ってこいと言ってくれた大塚監督に恩返しをしたかった」。その目から涙がこぼれた。