神奈川高校野球 タテジマがくれたもの(6)
小笠原と吉田 大きな夢を追い掛け
高校野球 | 神奈川新聞 | 2019年3月19日(火) 05:00
8回裏
2015年夏に、東海大相模に敗れた経験を糧に、走り続ける球児たち。彼らのまなざしの先にいる2人の甲子園優勝投手もまた、大きな夢を追っていた。
左腕エースだった小笠原慎之介はドラフト1位で中日に入団した。昨季は2リーグ制後の球団最年少で開幕投手を担い、プロ初完封もマーク。球界を代表する左腕への階段を上っている。
「自分の世代のみんなが野球をやっていてほしい。続けているだけですごくうれしい」。そんな思いが色濃くなったきっかけは「平成の怪物」の移籍だった。
宿敵・横浜で甲子園春夏連覇を成した松坂大輔がソフトバンクから中日にやってきたのだ。1997年生まれの小笠原にとって、98年から始まった数々の伝説をリアルタイムで知っていたわけではないが、幼少期に野球を始めた頃から、「松坂世代」の存在を意識してきた。
「ヤクルトの館山さんに阪神の藤川さん、ソフトバンクには和田さんがいて…。自分たちの代の出来事をみんなで共有できるってすごくうらやましいしかっこいい」
「小笠原世代」と呼ばれるにはまだ遠いことは分かっている。ただ「例えば生まれた年の『平成9年世代』とか『1997年世代』だっていい。象徴する何かが欲しい」
プロの第一線で厳しさを味わってきたからこそ、松坂世代の偉大さを感じ、そう強く思う。
鳴り物入りで入団し、1年目から1軍のマウンドに上がった。それでも開幕投手を務めた昨季は5勝に終わり、3年間で通算12勝20敗。
今季こそ飛躍を期しているが、昨秋に2度目となる左肘の遊離軟骨除去手術を受けた。リハビリ期間中に左肩を痛めて復帰時期は遅れている。
「プロじゃなくてもいい。社会人でも、草野球だっていい。一人でも多くの選手に野球を続けてほしい。『この世代はやっぱりすげえな』って、いろんな場所で思われていたい。その世代を自分が引っ張りたい」
9回表
「あいつは昔からそういうことを言うタイプですよね。高校の時から熱い気持ちを持って引っ張ってくれた」
右のエースとして、小笠原と優勝を分かち合った吉田凌(オリックス)は戦友の「世代を引っ張るのは俺だ」という強いメッセージを笑いながら受け止めた。