高校野球の第66回秋季関東大会第3日は29日、茨城県の水戸市民球場ほかで開かれ、神奈川1位の横浜は栃木1位の佐野日大に3-5で敗れ、来春の選抜大会当確ラインとなる4強入りを逃した。白鴎大足利(栃木)桐生第一(群馬)山梨学院大付がベスト4に進んだ。
横浜は初回に3点本塁打などで一挙5失点。主戦左腕伊藤将司(2年)は二回以降は無失点に抑え、打線も高濱祐仁(同)の適時打などで反撃に転じたが、好機を生かし切れなかった。
◇
【評】初回の攻防が勝敗を分けた。横浜は一回1死満塁の好機を生かせず無得点に終わると、その裏に失策が絡んでピンチを広げ2点適時打と3ランで5失点を許した。
主戦伊藤は二回以降は無失点。計11安打を放った打線は三、四回に適時打で1点ずつ返したが後が続かず、九回1死二、三塁の場面も1点がやっとだった。
■初回の攻防で明暗
水戸の秋風は横浜ナインを冷たく包んだ。2点を追う九回2死三塁。浅間が振り抜いた大飛球はフェンス手前で中堅手のグラブに収まった。屈指の好打者は天を仰ぐ。「今は何も考えられない」。勝てば選抜切符をほぼ手中にする一戦。ここで終わるはずではなかった。
初回の攻防が全てだった。3安打を集めてつくった1死満塁のチャンスに、5番高井がスクイズをファウルにした後、併殺打で無得点。その裏、1死一塁から遊ゴロを高濱が二塁へ悪送球すると、2点適時打と3ランで5点を先行された。
「併殺は取れないと思っていたが焦ってしまった」と高濱。懸念していた守りのほころびに、渡辺元智監督(68)も「5点は重すぎた。大一番では一つのエラーが落ち度になる」と厳しい。
今夏の全国選手権16強のレギュラーが8人残るチーム。経験は強みである一方、準備は十分にできなかった。「鍛える時間が少なかった。体力面も含めベストの状態ならば」。故障者も4人。計算通りには進まなかった。
ただ、名門の矜持(きょうじ)は保った。主戦伊藤は二回以降無失点。打線もじわじわと追い上げ、最終盤、あと一歩というところまで迫った。「この先を考えれば簡単に負けるわけにはいかない」と指揮官。選抜大会出場の可能性はまだ、残っている。
主将の松崎は言う。「今までやってきたことが甘かったんだと思う。このままでは甲子園に行っても勝てない」。敗戦の苦さを糧に、厳しい冬を乗り越える。その先に春の陽光が差すことを信じて。
■痛恨の一球悔やむ
横浜の主戦伊藤は、課題の立ち上がりに3点本塁打など5点を許し、「夏からエースを任されているので、しっかり投げないといけない」と責任をかみしめた。
一回、失策が絡んで1死一、二塁から連打を許して2失点。なお2死一、二塁、フルカウントから甘く入った直球を左翼席へ運ばれた。「大事に行こうとしすぎて力のない球を投げてしまった」と痛恨の一球を悔やむ。
二回以降は走者を許しながらも要所を締める「いつも通りの投球」で無失点。大黒柱は「きょうの失敗を体に覚えさせて次に生かす。休んでいる時間はない」と涙を拭った。
【】