神奈川ナンバーワン左腕の座は渡さない。言葉はなくとも、投球が雄弁に語っていた。桐蔭学園のエース、齊藤が8安打9奪三振で今大会4度目の完封勝ち。昨夏の神奈川大会決勝で敗れた桐光学園を退けた。
ライバル視する同じくサウスポーの松井が連投を回避。だが、準決勝で118球を投げていた桐蔭の背番号1は先発マウンドに立った。
「うちはエースを立てて勝ちにいく」。試合前のミーティング。そんな土屋恵三郎監督のげきを聞いて燃えないわけにはいかない。
右打者の内角にストレートやスライダー。外角には準々決勝の平塚学園戦から使いだしたツーシームを厳しいコースに投げ込んでいく。
三回2死一、二塁で、桐光学園の4番植草をスライダーとツーシームを駆使して空振り三振に。昨夏の敗戦以来磨いた制球力と強気の投球で手玉に取った。
向上したのは技術だけではない。「以前は野手のエラーで落ち込んでいたけど、切り替えて自分から(野手に)声を掛けるようにしている」。エースとしての自覚が左腕を強くしている。
14年ぶりの優勝。それでも少し残念なのは、松井との勝負が実現しなかったからだ。残るチャンスは関東大会か本番の夏。「今は松井が上だけど、次は投げ合って勝ちたい」。勝ち気な左腕は、投手を投手たらしめるプライドを持っている。