旅立ちのときを迎えた。1年前、高校野球の選抜大会を制した東海大相模ナインも新たな道に進む。胸に残る春の歓喜はしかし、切ない余韻を残す。夏は新型コロナウイルスの感染拡大で出場辞退を余儀なくされ、恩師との別れは唐突に訪れた。ゲームセットなき敗退を経て、大学野球に新天地を求めた5人がつづるそれぞれの結末と、未来─。
紫紺の大旗を手にし、感慨がこみ上げた。「重かったけど、小さい頃から見てきたいろんなものが詰まっているんだな」。賛歌を浴び、場内を一周する東海大相模ナイン。先頭を歩む門馬功の眼前に、夢見た光景が広がっていた。
アグレッシブ・ベースボールの申し子は活発だった。1番打者として駆けた春。「たまに動画で見たくなる」。照れ笑いが浮かぶのは、福岡大大濠との準々決勝で甲子園初アーチを放った直後のシーンだ。出迎えた父・敬治前監督(52)とグータッチ。「人生で初めて。あれは忘れられない」
門馬家の悲願を背負った次男坊。兄・大さん、姉・花さんに続き自然の成り行きで門をたたくと、2年秋から副主将を任された。
「1年から経験のある大塚と石田と3人でチームを引っ張る覚悟だった」。寮でのミーティングでは毎回、最前列に座って監督の話に耳を傾けた。あくまで一選手。だから、その一報は衝撃だった。
訳が分からなすぎて―
東海ナイン旅立ちの春(5)左翼手・門馬功
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父と遂げた春の日本一は「家族の夢だった」という [写真番号:1075006]
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準々決勝で甲子園初アーチを放った門馬。父・敬治さん(左)とグータッチ=昨年3月29日、甲子園 [写真番号:1075007]