新戦力の台頭によりチーム力の底上げがうかがえた一方で、キャンプ前にラミレス監督が「今年も求める」と公言していた昨年のスローガン「凡事徹底」の浸透はまだ不透明なところが多い。
キャンプ第2クールの初日の6日。ケース打撃で送りバントに取り組んだが、打者19人のうち半数近くの8人が失敗し、自分のミスに苦笑いを浮かべる選手もいた。現役最多293犠打をマークしている田中浩が初球で鮮やかに決めると、スタンドはどよめいていた。
昨季セ・リーグで最も少ない81犠打に終わった送りバントの成功率を上げることも、当たり前のことを当たり前にこなす凡事徹底の一つではあった。ただ、22日間にわたったキャンプで、チーム全体でバント練習に割いたのは結局この約1時間だけだった。
「練習の回数はこれで十分だ。練習で数をこなすより実戦でトライする方が身に付く」。こう指揮官は強調するも、紅白戦を含む実戦10試合で成功した送りバント6度のうち2度がエキスパートの田中浩によるものだ。走者を二塁に置いた場面でバントを試みるもバットが空を切り、二走が刺殺されるミスもあった。
それでも、ラミレス監督がネガティブな言葉を並べないのは選手のプロ意識を信じているからだろう。むしろ指揮官が時間を割いたのは、休日を返上して2軍のグラウンドに足を運ぶなど、昨季と同じく自主性を促すべく動いたことだ。頻繁に2軍の選手を1軍の練習に呼び、昨年のキャンプの倍以上となる人数を1軍でプレーさせた。
「1軍の雰囲気を味わわせてモチベーションにつなげたい」(ラミレス監督)。そんな狙いは、次代の大砲候補、ドラフト5位の細川(茨城・明秀学園日立高)が阪神との練習試合でソロ本塁打を放つなどの若手の成長につながった。
もちろん、昨季のレギュラーたちも座して開幕を待っていない。ともに28歳の梶谷、宮崎は夜間の駐車場で黙々とバットを振っていた。
送りバントの精度の向上などを含めて、選手のプロ意識に委ねた今キャンプ。青山総合コーチは「バント練習は秋のキャンプで時間を掛けた。正しいかどうかは、シーズンの結果が答えになる」と言った。