「負けたまんまで終わりたくなかった」
それが、3年連続で夏の大会1回戦で敗れた高稜高のエースだった尾仲祐哉(広島経大)が野球を続けた理由だった。
球種は130キロ台の直球とスライダーのみ。身長も170センチ。大学からのリクルートは、当然1校もなかった。「普通よりも下の球児」で、自分でも無謀だと思ったが、強豪・広島経大のセレクションに挑むと、「投げっぷりの良さ」を買われて合格した。「4年間、ボール拾いで終わるかも」という不安を抱いて大学に入学した。
ただ、心配は杞憂(きゆう)に終わるどころか、1年後にはエース級に急成長した。投手に特化した練習メニューや、ウエートトレーニングに初めて出会ったことが大きかった。2年春にはベストナイン、最優秀防御率賞を受賞。4年春には5勝0敗で最優秀選手賞に輝いた。直後の大学選手権の九州国際大戦では14奪三振。鋭いスライダーとカットボールを駆使する最速150キロ右腕は、一躍ドラフト候補に躍り出た。
憧れは身長167センチで球界一の小柄投手、谷元(日本ハム)だ。3年連続で50試合登板し、昨秋の日本シリーズで胴上げ投手になったタフな右腕に自身を重ねる。「身長が低くたって、本格派のように圧倒したい」。プロでも自分の道を切り開く。
おなか・ゆうや 福岡県北九州市出身。福岡・高稜高-広島経大。高校時代は夏の福岡大会で3年連続初戦敗退も、広島経大では2年春にチームを優勝に導くなど広島六大学リーグ通算23勝をマークした。171センチ、72キロ。右投げ左打ち。背番号29。21歳。