
8回戦(マツダスタジアム)
横浜DeNA
000 200 000|2
000 100 000|1
広島
赤一色に染まった敵地の熱狂をため息に変えた。
九回2死一、三塁。井納はありったけの力を右腕に込めた。「どうしても勝ちたい」。外角のスライダーは捉えられたかに見えたが、左翼フェンス際で筒香のグラブへ。1964年以来51年ぶりの7カード連続勝ち越しにチームを導く、意地の140球だった。
この日は、広島球団がビジター応援席の一部を地方の広島ファンのために開放。球場の片隅にベイスターズファンは押しやられたが、少なくとも声援を送ってくれる人たち、チーム、そして自分自身のために、右腕は負けられなかった。
「きょうはおまえに託すぞ」。試合前、中畑監督からそう告げられていたという。8日の巨人戦は四回途中までで4失点。開幕から張ってきたカードの初戦も山口に譲った。中7日のマウンドに向けて普段は取材に快く応じる29歳は口を結び、この一戦に集中していた。
一回1死満塁を連続三振で切り抜けたが、以降もピンチの連続だった。それでも丁寧に低めを突き、失ったのは犠飛による1点のみ。「これが僕本来の投球。粘ってしっかり期待に応えることができた」。自分のスタイルで得た勝利が何よりもうれしい。
「いつも以上に声援を送ったよ」。300席ほどのビジター応援席で声をからした大井町在住の男性(55)が目を細める。ファンからの温かいエールが今季初完投の背番号15の頭上に降り注いだ。
「井納の能力を考えれば、これだけの投球ができる。大合格。7カード連続勝ち越しは51年ぶり? 自分は10歳か。まだ蒙(もう)古(こ)斑(はん)が残っていたな」
バルディリスが2試合連続の本塁打となる決勝アーチを放った。
四回1死一塁で、甘く入ったカットボールを豪快に左翼席中段へ。この試合まで本拠地で22回無失点とし、防御率リーグトップのジョンソンの失投を逃さなかった。「投球術を知っていて、制球が良い投手のコントロールミスを捉えることができた」と笑みをこぼした。
ただ、二回の1打席目で左足甲に自打球を当てた影響から五回の守備から交代。アイシングなどで治療した助っ人は「あした? まだ分からないよ」と慎重に話した。