
執念か、幸運か。どちらにせよ、劇的な逆転ゲームに沸いたのはスタンドだけではない。「勝利の女神様がこちらに傾いてくれたのかな」。中畑監督も興奮が冷めない。
2-3の七回。ドラマはアクシデントから幕を開けた。投手がグラブではじいた下園の打球は幸運な内野安打に。さらに江柄子の1球目が桑原の頭部を直撃。その場に倒れ、担架で運ばれながらも「まだいける」と直訴する21歳の姿がナインのハートに火をつけた。
代打後藤の打球が三塁ベースの側面に当たってファウルゾーンを転々とする幸運な同点二塁打になると、今度は2012年にともに台湾のウインターリーグに赴き、桑原とバットを磨き合った仲の代打松本だ。
「前に飛ばせば、何かが起きると信じていた。クワ(桑原)のためにも打ってやる」。1死二、三塁から低めの変化球をたたきつけると、跳ね上がった打球はショートの頭上をわずかに越え、勝ち越しの走者2人をホームに迎え入れた。
「ツキが味方してくれたよ。だって、まともな当たりが一本もないんだもの」。指揮官はそう言うが、バルディリスが九回1死に阿部の邪飛をスタンドに飛び込みながら好捕するなど、熱い気持ちが女神の胸にも届いているのだろう。
次はいよいよ5・5ゲーム差で追う3位阪神の敵地へと乗り込む。
【神奈川新聞】