延長十一回。菊地が投じた先頭打者への初球だった。完璧に捉えられた白球は左翼席へと吸い込まれていく。
「みんながここまでゲームをつくってくれたのに一球で終わらせてしまった。申し訳ない」。この日、1軍に昇格したばかりの右腕が梵にサヨナラ本塁打を浴び、中継ぎ陣総動員で耐えに耐えてきた競り合いはあっけなく終わった。
後味の悪さは一球の失投だけが原因ではない。「受け身の状態が続いている。勝ちにつながる流れを引き込めないでいる」。ベンチに漂う重い空気に中畑監督は危機感をあらわにする。
守護神ソーサは結果的に無失点だったものの、2四球1暴投とオープン戦から大荒れの投球が続いている。「球威が全然足りない。不安」と川村投手コーチ。勝利の方程式が揺らいでいる。
一方、持ち味である打線も湿っていた。7回1失点と好投した三浦を援護できず、石川の二塁打で同点とするのが精いっぱい。梶谷、筒香はともに無安打で、八回1死一塁では黒羽根が送りバントを試みるも捕邪飛で好機をつぶした。
試合後には打撃コーチがナインを集め、緊急ミーティングを実施。「今が厳しいところ。踏ん張らないといけない」(中畑監督)。3連敗で1勝4敗となり、最下位に転落。スタートダッシュをかけるはずの足は完全にもつれている。
【神奈川新聞】