
ラミレス体制で初めてクライマックスシリーズ(CS)進出を逃した2018年の最終戦。
甲子園まで訪れた南場智子オーナー(56)から試合後、正式に続投要請を受けたラミレス監督は、オーナーに対し来季への強い意欲を示し、チーム改革へのプランを熱弁したという。
「自分自身を振り返って変えるべき部分、どのようにコーチと助け合いながら選手に指導すべきかを考えたい。自分の考え方、試合へのアプローチも変えていく」
その後、別々に開いた会見で記者に囲まれた監督とオーナーは、同じフレーズを口にした。
「今年は学びの1年だった」
ラミレス監督が就任した15年オフ。チームは10年連続Bクラス(4位以下)に低迷していた。引退からわずか1年後、指導者としての経験はほとんどなかったが、迷わず大役を引き受けた。

そんなラミレスベイスターズはファンの期待に応え、2年連続のCS進出、昨季は19年ぶりに日本シリーズも戦った。若きチームを率いてシーズン終盤に追い上げ、短期決戦は大胆采配で勝ち抜いた。今季はCS出場こそ逃しはしたが、南場オーナーは「3年間の総合評価」で続投を決断した。
来年で創設70年目を迎える球団史をひもといても、Aクラス(3位以上)入りは17度しかなく、Aクラスに複数回導いた監督は、過去わずかに3人しかいない。
巨人と西鉄(現西武)でも優勝した後、大洋を初優勝に導いた名将・三原脩、パ2球団での監督経験を経て就任した別当薫、投手コーチとして百戦錬磨で、ベイを38年ぶりの日本一に輝かせた権藤博。かつての名伯楽たちは、経験という武器を持っていた。
ラミレス監督を招聘(しょうへい)した高田繁ゼネラルマネジャー(GM、73)は「当時は若い選手が育ちつつあり、選手のことを知っている人ならば、1年目から勝負に徹することができた」と若いOBにチームを託した狙いを振り返る。その狙い通りに勢いのあるチームが出来上がっていった。
今季は、さまざまな壁に阻まれた44歳のラミレス監督はまだ、指導者人生を歩み始めたばかりだ。「失敗から学ぶことがある。自分自身をしっかりと修正したい」と前を向く。
気鋭のIT企業のトップを務める南場オーナーも指揮官の「変化」を高く評価した。「1年目から毎年、采配が変わっていった。どんな大人でも変化することは決してたやすいことではない。同じ失敗を繰り返さず、彼なら常に進化できる」
高田GMは今季限りで退団する。19年は横浜DeNA球団の草創期から支えた柱が抜ける。編成トップの役割を引き継ぐ三原一晃球団代表(50)は2年間、高田GMと行動を共にしてきた。

「野球の内側まで時間をかけて教えていただいた。ただ自分が高田繁の代わりになれるはずがない。組織の力を合わせて対応することになる」
21年ぶりのリーグ優勝を狙う来季は間違いなく現場とフロントにとって「挑戦」の1年となる。
「プロ野球の監督という夢がかなった。選手たちを厳しく叱る『ボス』ではなく、選手の能力を引き出し、育てる『リーダー』になりたい」。若き指揮官は就任直後にそう語り、現役時代の恩師から学んだ野球を下敷きにした。「選手に対する我慢」を貫いたヤクルト・若松勉氏、そして「勝つための戦略」に徹した巨人・原辰徳氏の背中を追ってきた。
あれから3年。

積み重ねてきた栄光と挫折は19年シーズン、リーグ優勝を目指す143試合のための血肉となった。
21年ぶりの頂点をつかむための戦いはもう、始まっている。
