【Bレコード】OB編<10>多村仁志
大逆転演出した打棒 代打出場で2アーチ
ベイスターズ | 神奈川新聞 | 2020年5月29日(金) 23:38
ど派手な花火が待っているから、横浜劇場は終演が見通せない。2013年5月10日、この夜も熱かった。巨人を敵役に、最大7点差をひっくり返した大逆転劇。主演は2発のアーチで筋書きを変えた多村仁志だ。
登場したのは3─10の七回無死一塁。敗色濃厚な展開での代打だった。追撃ののろしを上げる左翼席上段への2ランはしかし、序章に過ぎない。
1点差に迫った九回1死一、二塁。舞台は整っていた。
「ぶち込め、ぶち込め」。監督・中畑清のげきを背に、西村健太朗の151キロを振り抜く。「勝ちたい。それだけ。つないでくれたので何とかしたかった」。右翼席への一打は、野球人生で初のサヨナラ弾だった。
横浜高から1995年に入団も、98年の日本一は下積み時代。頭角を現したのは21世紀に入ってからだ。2004年に3割5厘、40本、100打点。06年にはWBC日本代表にも名を連ね、その打棒はベテランの域に入っても健在だった。
ソフトバンクを経て7季ぶりに復帰した13年に12本塁打をマーク。ただ、横浜での最後の3年間は若手が台頭しつつある変革期とあって、舞台袖で見守る時間も長かった。
22年間で通算195本のアーチを架け、肩や足でも魅せたマルチプレーヤーは、16年に中日で引退。ベイスターズが初めてクライマックス・シリーズに進出したのは、その年のことだった。
=敬称略