メジャー出身の新任コーチがベイスターズ投手陣に新風を吹き込んでいる。今季から2軍投手コーチを務める球団OBの大家友和氏(41)が、打者の手元で動くボールや球数を抑えた調整方法など、米国時代の経験を伝授。その効果は早くも1軍マウンドに表れている。
6日の阪神とのオープン戦。弱冠19歳の京山が猛虎打線を手玉に取った。5回を2安打無失点。好投の要因を若き右腕は「カットボールを生かせた。投球の幅が広がった」と明かした。
握りを指導したのが、ツーシームやカットボールを駆使してメジャー通算51勝を挙げた大家コーチだ。「あくまで選択肢の一つ。選んで生かしたのは彼」と謙遜するが、恩恵を受けた投手がもう一人いる。入団9年目の国吉だ。
「未完の大器」と称され続けた長身右腕は、カットボール主体の新たな投球スタイルで水を得た魚のように躍動している。オープン戦は3試合連続無失点。さらに、大家コーチが動く球を浸透させる一番の狙いが「アウトの取り方」に表れていた。
キャンプ中を含めた実戦で打者30人と対戦し、外野への打球はわずか2本。バットの芯を外して半数近くをゴロで打ち取る投球は、狭い横浜スタジアムにはうってつけだ。同コーチは「このチームでやる以上、そのことは常に頭にある」と話し、ラミレス監督も「今までの指導者が引き出せなかった彼の力を引き出せている」とたたえた。
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春季キャンプ中、2軍のブルペンで新たなルールを採り入れた。「1こま10分」で区切りを付けた。10分間で投げられる球数は平均で40球ほど。希望すれば2こまも投げられる。米国ではこのスタイルが主流だったという。海を渡った当時は20代前半で「足りなすぎる」と歯がゆさもあったが、同時に合理性を肌で感じたという。
「時間を制限すれば目的を持つようになる」。例えばエンジンがかかるまでに要した20球や、満足いくまで「もう1球」と投げ続けた球は本当に「必要」か。無駄を省けば少しでも肩を温存できる。川村2軍投手コーチも「若手が目的を持ってブルペンに入れている」と実感を込める。
指導への情熱とは-。「野球を嫌いにならないでほしい。楽しむわれわれがいてこそお客さんも楽しめる」。そして、高卒から在籍わずか4年で米国に巣立ち、その12年後に再び迎え入れてくれたベイスターズへの思いがある。「現役時代は口にしなかったけど、この球団には恩を感じている。恩返しできればいい」