

どうしても、この舞台に戻ってきたかった。CSファイナルステージ第3戦、1-0の六回2死満塁からリリーフしたベイスターズの須田幸太は、1球で広島の反撃を食い止めた。レギュラーシーズンで苦しんだ7年目の31歳は「忘れものが広島にある」と思い続けていた。日本シリーズ進出を果たせなかった昨季の屈辱を晴らすためにマウンドへと向かう。
背番号20の脳裏には同じ光景が浮かんでいた。昨年10月14日のファイナルステージ第3戦。3-0の八回2死満塁で新井を迎えたところで、須田は投入された。全て直球勝負で右邪飛に抑え、ファイナルステージ唯一の勝利に貢献した。
あれから1年。砂田が松山を歩かせた二死満塁の窮地。あの時と同じタイミングで、ブルペンの電話が鳴った。「毅樹(砂田)には悪いけど、最悪な状況を想定して準備していた」。経験を生かして冷静にエルドレッドを左飛に仕留め、無失点リレーのたすきをつないだ。
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6年目の昨季はチーム最多の62試合に登板した右腕だが、今季は一転、不調に陥った。開幕直後、4月2日のヤクルト戦(神宮)では延長十回1死満塁で代打鵜久森にサヨナラ満塁弾を浴びた。6月からは長い2軍暮らしも味わった。
今季の登板はわずか23試合。抜群の制球と球威で押した昨季の投球からは程遠かった。パットンの加入や、砂田の台頭で「戻る場所がない」と危機感を募らせ、トレーニングや投球フォームも一から見直してきた。
CS進出後の今月3日から1軍合流し、ギリギリでCSメンバー入り。「チームが勝つために何でもやりたい」と誓う右腕に、「今年は良い成績ではなかったが、やはり信頼している。だから六回も使った」とラミレス監督の信頼は揺るぎない。
CSはここまで2試合に登板して、一人も出塁を許していない。「まだまだ、これからですよ」。すべてのボールに魂を込める。