ファンを大切にし、何よりチームの勝利だけを目指し、鍛錬を重ねてきた右腕・三浦大輔投手に、チームメートやともに日本一を支えたかつてのメンバーは賛辞を惜しまない。
今月16日の甲子園。三浦が今季2度目の先発に立った阪神戦だった。井納はピッチングだけでなく、交代を告げられたときにこそ、長くエースに君臨してきた背番号18の揺るがないスタイルがあったと感じている。
1-2の五回、連打を浴びて1死二、三塁。42歳の背番号18はマウンドで21歳の2番手砂田が来るのを待ち、右手で背中をぽんとたたいて降りていった。
「自分なら(交代を告げられて)すぐにベンチに向かった」。井納が言う「誰よりもチームを思う人」はいろいろな思いを込め、後輩の腰をたたいていたのかもしれない。
「たくさん勉強させてもらい、たくさん面倒を見てもらった」。そう語り、目を赤く腫らしたのは木塚投手コーチだ。兄と慕う三浦とは現役で11年間、コーチとして5年間、ともに戦ってきた。
ストイックに取り組む姿勢にほれていた。自主トレーニングでともに汗を流したが、4歳上の三浦に年齢差を感じることはなかった。
今季球団初のクライマックスシリーズ(CS)進出を遂げたが、その原動力となった投手陣の躍進の背景に、木塚コーチは「三浦さんが良い教科書でいてくれた」ことがあるとみる。朝早くから試合に備える姿に影響され、今では「早めに来る選手、試合後にウエートトレーニングする選手も増えた」という。
ただ吸収しきったとまでは言えない。「まだCSが決まっただけ。三浦さんが託した思いを無駄にしちゃいけない」
木塚コーチの言葉を聞いたかのように、ルーキー今永がこう話した。「三浦さんがなぜ愛されるのかが実感できた。教わったことを受け継ぎ、次の世代にも伝えていきたい」