人に愛された。野球にも愛された。昨季、新人初のサイクル安打達成をはじめ、プロ1年目の記録を次々と塗り替えた横浜DeNAの牧秀悟(23)。若きバットマンの軌跡をたどるべく古里を訪ね歩くと、素顔を知る誰もが口をそろえた。「好かれるんだよ、牧は」(中西 悠)

牧は自分の世界に入っている。そんな子はほとんどいないよ(滝沢栄監督)
流れ弾のような雷が、中学1年の牧秀悟に落ちた。落としたのは長野市の硬式野球チーム「長野若穂リトルシニア」の監督、滝沢栄(67)。指導中に牧が突然笑いだしたからだ。
監督の背後でおどけるチームメートが目に入り、こらえ切れなかったようだ。滝沢が申し訳なさそうに回想する。「やんちゃな子が多かったから引き締めるいい機会だと思ってしまって、『ふざけるな』って」
既にチームの主力だった牧は、1カ月間の草むしりを命じられた。ボールに触ることを禁じられ、試合ではスタンドから声援を送った。それから、目の色が変わった。
予感「プロになれるかも」
DeNA牧秀悟の原点(2)お調子者の成長、苦い体験から
チームメートとの記念撮影に笑顔で写る牧(前列左、宮崎大瑚氏提供) [写真番号:980780]
練習場所の一つだったビニールハウス=長野市 [写真番号:980784]