
世界最高峰の迫力が日本中を魅了し、代表チームの躍進が国内外を驚かせたラグビーワールドカップ(W杯)日本大会。ラグビー熱が新型コロナウイルスの感染拡大に水を差されたが、プレーや競技の精神は今なお、次代を担う子どもたちの心をわしづかみにして放さず、大人たちを虜(とりこ)にしている。20日はW杯開幕から1年─。
“ラグビー日和”の午後だった。6日、深沢多目的スポーツ広場(鎌倉市)。「もっと低く、前へ」「サポートを忘れずに」。豪雨後のグラウンドで鎌倉ラグビースクール(KRS)の中学生が泥にまみれ、楕円(だえん)球を追いかける。その中に、1年生の鈴木伯さん(12)=横浜市栄区=の姿があった。ラグビー歴2カ月。小学生時代は野球を続けたが、ラグビーに転じた。
きっかけはW杯だった。日本代表に心を揺さぶられた。とりわけ記憶に残るのは、優勝候補アイルランド戦の逆転トライだ。パスを回し、最後はウイング福岡堅樹選手が飛び込んだ。世界ランキング2位を破る大金星を挙げ、初の8強入りを引き寄せた一戦は「勝てるなんて思っていなかった。興奮しました」。
W杯後のクリスマスプレゼントはラグビーボール。初めて触れる楕円球は「代表選手が持つと小さく見えるのに、実際は思いの外、大きかった。選手の体の大きさを実感しました」。
「ワンチーム」
各地のスクールは子どもたちの貴重な受け皿だ。
KRSは県内約20チームの中で上位を争う強豪の一角。毎週日曜日、幼稚園児から中学生までが練習を重ね、試合に臨む。以前は約180人だったメンバーはW杯後に急増し、今では約280人。これまでは経験者の親の影響で始める子どもが多かったが、親が未経験でも子ども自身の希望で参加するケースが増えた。