「濃い人生」深く共感
短くても夢に向かい 「一生懸命の大きさ違う」
6年1組の教室。いつもとは違う雰囲気に、緊張した様子の子どもたち。3時間目は、校長先生がゲストティーチャーだ。
「今日は、ある人を紹介したいと思います。ここ、二宮で育った女の人です」と言いながら、黒板に「秋澤ひとみさん」と書いた。そして、秋澤さんの生涯をつづったプリントをゆっくりと声に出して読み始めた。
読み終えた校長先生が、真剣なまなざしで子どもたちに問い掛ける。
「秋澤さんは耳が聞こえなくても、一生懸命努力して難しいことも乗り越えてきたよね。でも、夢に向かって努力しているところで、事故に遭って亡くなってしまった。みんなは、ひとみさんの人生をどのように考えますか」
子どもたち一人一人が考え、静かな時間が流れていく。しばらく時間がたったところ、自分の考えを話し始めた。
「耳が聞こえないというハンディキャップを克服してきたのに、耳が聞こえないことが原因で亡くなってしまった。ハンディキャップを克服することは難しいのかな」「夢をかなえられなかったのは残念だよ」「でも、ここまで頑張れたことがすごいんじゃない」
校長先生は、子どもたちの言葉をうなずきながら受け止めている。
一人の子が「一生懸命の大きさが違う」と発言した。「大きさってどういうことかな。もう少し説明してくれる?」と聞き返す。
「人生の濃さが違うんじゃないかなと思いました」
校長先生は大きくうなずいて、「どれだけ一生懸命に生きたかということかな。ひとみさんは短い人生だったけれど、ぎゅっと濃い人生だったのかもしれないね」
授業の終わりに、校長先生が子どもたちに思いを伝える。
「一瞬一瞬を大切にして、なりたい自分に向かって頑張ってほしい」という校長先生の言葉に、教室中の真剣な顔がうなずいていた。
さまざまな教室から、県教育委員会の指導主事や先生らで構成する「学び見守り隊」がリポート
神奈川県教育委員会では、他にも各校の取り組みを「元気な学校づくり通信『はにい』」で紹介。
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f420082/