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神奈川新聞と戦争(26)1932年 王道国家が守る国体

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2017年1月31日(火) 09:49

「新王道国建設」と題した1932年2月29日付の横浜貿易新報の社説
「新王道国建設」と題した1932年2月29日付の横浜貿易新報の社説

 中国東北部に日本のかいらい国家「満州国」が設立される前日、1932年2月29日、横浜貿易新報(横貿、本紙の前身)の社説「新王道国建設」は、題名の通り、建国の大義を「王道」「道徳」に求めた。清朝の皇帝が新国家の元首に据えられることで、そうした倫理観を権威づけた。

 社説がいう「王道国家なるものは、実に、最高道徳を理想とし、正義公道を本体として立つ国家であらねばならぬ」とは、中華民国に対置したものだった。言わんとするところは次のようなものだったろう。辛亥革命の後に成立したこの共和国は、ふたを開けてみれば軍閥がはびこり、軍閥同士の対立によって治安も政情も不安定ではないか。対して、伝統的な王朝の皇帝が統治する「満州国」こそ「道徳を本義とする国家」を具現化できる-。

 前回述べた通り、王朝を頂く「王道」の国家観は、日本の天皇制の「国体」に重ね合わされる。社説の後段には、こうある。

 「満蒙[中国東北部]新国家の前途は、言ふまでもなく、我が日本とは最も密接且(か)つ親善の関係を保たなければならぬ。特に、王道を以(もっ)て立つ上は、我が日本の王道精神に依つて、真正の仁義国たる実績を挙ぐるに務むることが肝要であつて、我が日本の指導と協力との下に、新国家としての成果を収むるに努むべきである。而(しか)して、我が日本に於ても、最善の努力を払つて、満蒙新国家を啓導し、真正の王道国としての実を挙ぐべき援助を与ふることが肝要である」

 日本と密接、とは「満州国」が日本のかいらいだという点だけでなく、共通する国家体制の含意もある。「我が日本の王道精神」とはすなわち「国体」だ。

 そして「我が日本の指導と協力との下に」「満蒙新国家を啓導し」のくだりからは、日本には中国を指導する役目がある、との思想が読み取れる。「立ち遅れたアジアを近代化した日本が善導すべきである」との論理は、これまで見たように、前年の満州事変でも、また10年の韓国併合の際にも顕在化した。それが、ここでも繰り返された。

 なぜ、日本の「使命」を強調するのか。社説の文末からうかがえる。

 「欧州諸国[の]間に非人道的なる不祥事や革命の相次ぐ時代に当つて、東洋の天地に、王道を標榜(ひょうぼう)する新国家が、新たに行進の歩を挙げ来つたことは(略)近代史上の一事実と認むべきである」。市民革命を「非人道的」とし、個人の自由や民主主義をはらむ近代思想を警戒した。「王道」でアジアを善導しようという究極の目的は「国体」の維持だったろう。

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