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神奈川新聞と戦争(23) 1910年「内鮮一体」の正当化

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2017年1月11日(水) 09:06

1910年8月29日付の横浜貿易新報の1面に掲載された「朝鮮俚諺集」
1910年8月29日付の横浜貿易新報の1面に掲載された「朝鮮俚諺集」

 韓国併合条約の発効当日、1910年8月29日の横浜貿易新報(横貿、本紙の前身)の1面に「朝鮮人日本化策」と題する論説が掲載された。「韓国通」の文学博士の見解をまとめたもので、韓国人は「道義観念欠乏」との一節もある。その偏見が著しい。

 「儒教の精神に至りては遺憾ながら吹き込まれ居らず、青年の罪悪として放蕩(ほうとう)、賭博、窃盗、詐欺殊に前二者の盛んに行はれて社会的制裁の薄弱なるは慨嘆の外なし」と倫理観の欠如を指摘した。続く一節にも悪意がこもる。「家庭に於ても虚偽窃盗は却つて奨励し居らずやと怪まるゝ程にて」。虚偽窃盗を家庭で奨励しているのでは-と。

 記事は、韓国人の計画性のなさや怠惰を列挙する。「韓人間には自他資産の区別少なく浮沈甚はだしき生涯を渡り居り、同時に勤勉忍耐を愚視して僥倖(ぎょうこう)乃至(ないし)投機を好むの風あり」

 横貿は各方面にわたる韓国人の「未開」ぶりを強調し、さげすんだ。だが、それで終わりではなかった。これら記事の数々は、常に一つの結論に収束した。「日本と一体化することで近代化し幸福がもたらされる」という、併合を正当化するロジック(論法)だ。

 改めて同じ1面の論説「皇権発揚」を読むと、日韓の同一性を強調した記述に気付く。「我国と韓国とは、元来其(その)種族を同うし、言語の系統を同うする兄弟(けいてい)国」「歴史の昔に立還りて、再び我国の統治下に復する」といった具合だ。

 こうした論調は横貿に限らない。海野福寿著「韓国併合」は「東京朝日」「東京日日」「万朝報」などの新聞や総合雑誌の論説を分析した姜東鎮の研究を引き、言論界がこぞって併合を正当化したと指摘する。

 論拠の一つは「同祖同根論」だった。メディアに加え、歴史家も学問の権威を背景に同論を広めた。同著で海野は「韓国は貧弱なる分家で、我が国は実に富強なる本家とも云(い)うべき者」とした古代史の大家・喜田貞吉の論文を挙げた。併合は韓国を滅ぼしたのでなく、あるべき姿に戻しただけだ-とする同化主義は、やがて「内鮮一体」のスローガンとして定着していく。

 「同祖同根論」を応用した記事が、同じ1面の最下段に載った。日本のことわざに類似する朝鮮のことわざを一覧表にした「朝鮮俚諺(りげん)集」で、例えば朝鮮の「軟地挿木」は日本の「糠(ぬか)に釘(くぎ)」、「信斧斫足」は「飼犬に手をかまる」、「種瓜得瓜」は「瓜(うり)の蔓(つる)に茄子(なす)はならぬ」、「以鎌蔽目」は「頭隠して尻隠さず」、「書堂狗三年吠風月」は「習よりなれる」。

 狙いは明らかだろう。庶民に身近なことわざを通じて、日韓の類似性を示す。「やっぱり日本と朝鮮は同じなのだ」と思わせる。巧妙な世論誘導である。

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