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神奈川新聞と戦争
(133) 1941年 敵に「正義」を語らす

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2020年4月12日(日) 05:00

海軍水上偵察機の写真を掲げた1941年12月15日の神奈川県新聞。右下には「軍使の道案内に英婦人活躍す」の記事
海軍水上偵察機の写真を掲げた1941年12月15日の神奈川県新聞。右下には「軍使の道案内に英婦人活躍す」の記事

 寿屋(後のサントリー)は、横山隆一の人気漫画「フクちゃん」に似せた挿絵をあしらった広告を1941年12月15日の神奈川県新聞(本紙の前身)に載せ、子どもにまで戦費調達を訴えた。真珠湾攻撃の1週間後のことだ。

 同じ日、1面の左上に「太平洋の眼(め)」と題し、海軍省提供の水上偵察機の写真が掲載された。プロペラのアップと背後の軍艦に翻る旭日旗を組み合わせた構図が斬新だ。

 隣のリスボン発同盟通信配信の記事は「日米戦開始以来米国太平洋岸の空襲恐怖は日増しに激しくなつてゐるが、十三日サンフランシスコ来電に依(よ)れば同市の空襲警戒は依然厳重を極め夜間灯火管制が発令されると戦々兢々(きょうきょう)たる市民が一斉に消灯してしまふため、その間各工場は素(もと)より市の活動は完全に麻痺(まひ)してしまふ有様(ありさま)である」と混乱ぶりを伝えている。

 実際には日本軍の航空機が米太平洋岸に到達することはなく、逆に翌年4月には京浜地区初空襲があり、人々はこの記事のような状況を強いられる。そして寿屋も、広告を通じて空襲への備えを繰り返し呼び掛けていくことになる。

 この日の1面には「在支[中国]英米権益 続々我手に帰す」「比島[フィリピン]敵空軍潰滅(かいめつ)近し」など、勇ましい見出しが並んだ。多くの読者の戦勝気分を喚起したに違いない。

 その中に、日本軍による香港包囲を巡り「軍使の道案内に英婦人活躍す」との記事もある。英国の香港総督に降伏を迫る親書を携えた日本側軍使に、英国人女性が伴ったという内容だ。

 「我が軍艦が軍使を送り香港を戦火から救はんとする意図を知り、進んで愛犬テリア二匹を連れて軍使一行に加はつた」と、すっかりプロパガンダに利用された。そして「日本軍占領下の九龍の方が香港より遙(はる)かに安全です」と、この女性のコメントを他より大きな活字で書き立てた。

 敵国の市民の言葉を通じて日本軍の「正義」にお墨付きを与える。この構図は、外国人に「日本スゴイ」と言わせる近年のメディアに重ならないか。

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