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神奈川新聞と戦争
(131)  1941年  貯蓄を訴えた意味は

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2020年3月22日(日) 05:00

「奥様の腕前」と題し、戦費のための貯蓄を求めた寿屋の広告=1941年12月7日の神奈川県新聞
「奥様の腕前」と題し、戦費のための貯蓄を求めた寿屋の広告=1941年12月7日の神奈川県新聞

 「戦ひ 勝つ為(ため)には・・あなたが貯蓄をふやす事が何より必要です」。1941年12月5日の神奈川県新聞(本紙の前身)に掲載された寿屋(後のサントリー)赤玉ポートワインの広告は、貯蓄こそが「戦時の経済政策」の「土台」であると呼び掛けた。

 「戦争が長引くと税金も、物価も上り、貯蓄する事が次第に難しくなつて来ます」と生活の苦境に理解を示しつつも「併(しか)し、戦時の生活と平時の生活とは全く別のものです。国の為、勝利の為なれば、どんな困難にも耐へられませう!」と、戦時下を理由に、精神論を強調。「一円の貯蓄は、それだけ多く、弾丸を敵陣へ叩(たた)き込む事です。一円の無駄使ひは戦線を一歩後退させる事です」と、日々の節約が戦果を左右すると、脅すように訴えた。

 同7日の寿屋の広告には「奥様の腕前」の見出しとともに、かっぽう着姿の女性が描かれている。挿絵が醸す家庭的な雰囲気とは裏腹に、内容は5日付と同じく国民から戦費を絞り出そうとするものだった。

 「着古しの着物も繰回し方一つで立派に更生する。少い材料でも工夫すれば栄養豊かなおいしいお料理ができる。貯金についても、それと同じことが言へる。要は工夫だ。家計の切り回し方だ(略)そこが奥様の腕前の見せ所だ!」

 戦費調達の責任を主婦のやりくりの「腕前」に押し付けるような書きぶりだ。

 同8日の真珠湾攻撃、日米開戦を経た10日の紙面にも寿屋の広告が掲載された。挿絵は日の丸を掲げた戦闘機。だが、内容は主婦に節約を求めたものと大差なかった。「例へ一枚の紙でも無駄にせぬこと、全く不用と思へる物でも、もう一度、生かす工夫をすることです」。その心構えが国富になり「国防力も強化されて、飛行機も軍艦もどし〱(どし)製造されるのです」。

 同紙は緒戦の成果を大々的に報じた。同13日の見出しは「雄大無比・燦(さん)たり世紀の大作戦」「太平洋 我が完全制圧下」「米英艦隊全く沈黙す」「脅(おび)ゆるアメリカ」などと勇ましい。だが同日の寿屋の広告は「どんなに辛からうとも、勝つためには、増税も、消費の規制も、金属回収も、そして貯蓄も、笑つて担ふべき、当然の負担だ」と変わらなかった。現実の国力を広告は静かに語っていた。

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