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神奈川新聞と戦争
(92)1941年 胎児が国防を担う?

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2019年7月14日(日) 05:00

「生れる前の赤坊にも国防の大任が懸つてゐます」と記された広告 =1941年10月14日付神奈川県新聞
「生れる前の赤坊にも国防の大任が懸つてゐます」と記された広告 =1941年10月14日付神奈川県新聞

 太平洋戦争で米軍が空襲を本格化させたのは1944年秋以降だが、その「経験」はむしろ日本が先行していた。中国に対する31年10月の錦州爆撃や38年以降の重慶爆撃だ。前線と銃後の差がなくなる空襲の恐怖を、日本は早くから認識していた。30~40年代の紙面には、防空を巡る記事がしばしば登場する。

 41年10月14日の神奈川県新聞(本紙の前身)は、県内で実施された防空訓練について「県下各署管内、警防団、家庭防空群はいよいよ意気軒昂(けんこう)『サア敵機、何時(いつ)でも御座(ござ)れ』と基本訓練避難、救護から更(さら)に焼夷(しょうい)、瓦斯(ガス)、爆弾落下を想定して防火に重点を置き、防火訓練の活動を開始した」と勇ましくつづった。

 防空のためには、国民を無駄なく動員する必要がある。乳幼児も、将来の担い手として重視された。親子愛とは全く別次元で。

 そのことが、同記事の下にある広告から読み取れる。当時、商品宣伝を度外視し、自社の広告欄に戦意高揚の惹句(じゃっく)を載せていた赤玉ポートワインである。

 「母よ!」の横のフキダシが恐ろしい。「生れる前の赤坊(あかんぼう)にも国防の大任が懸つてゐます」。胎児が「国防」の任務を負っているというのだ。さらに細かい活字で18行にわたり記された文章は次のごとくだった。

 「産むといふこと自体が既に立派な臣道の実践です(略)立派に育て上げなければなりません」

 「近年我国人口の有様(ありさま)は、出生率の低下、乳幼児の死亡、結核による死亡が、諸外国に比べて非常な高率を示してゐる」

 「母たるもの、一大勇猛心をふるひ起して、まづ自ら心身の錬成につとめ、健全な母体を築いて、見事御国の期待に応へて下さい」

 ここには、個人を尊重する余地はない。「産む」ことは国防のため、出生率向上のため。国の「生産性」に貢献するか否かで、国民の価値が測られた。

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