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(185) 1943年 入営の日の貧相な活字

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2021年6月27日(日) 05:00

出陣学徒の入営を報じた1943年12月1日付本紙。活字が所々欠けている

 「けふの入営を前に学徒兵“鉄石の決意”さらば“祖国に我殉ぜん”」。1943年12月1日、徴兵延期が撤廃され、在学のまま「学徒出陣」が決まった学生らが入営する日、本紙はそんな見出しを掲げた。

 「祖国防衛の第一線へ─皇国の防人(さきもり)として熾烈(しれつ)な戦ひの庭に『けふよりは顧みなくて大君の醜(しこ)の御楯(みたて)と』征(い)で立つ学徒兵の紅潮した顔には米英撃滅の烈々の信念が漲(みなぎ)つてゐる。かつての日、青白きインテリの卵と称され学究の人と云(い)はれた学生も大君の赤子(せきし)である。日本学徒の面目にかけて雄々しく戦ふ先輩に続かんと誓ふ出陣学徒は…」

 これがリード(前文)である。11月下旬に連載された県知事らの談話「出陣学徒へ贈る餞(はなむ)け」で用いられた「青白きインテリ」などのフレーズが、この日も繰り返された。

 「けふよりは」は、半井清横浜市長の談話でも引用された万葉集の防人の歌「今日よりは返り見なくて大君の醜(しこ)の御楯(みたて)と出で立つ我れは」。

 兵士を古代の防人に重ね、出陣学徒を天皇の盾と捉えるレトリック(修辞)も一貫している。

 リードの後段は活字が所々欠け、非常に読みづらい。新たな活字の調達にも事欠く状況だったのだろう。「敢然とペンを捨て」「入営を前に日の丸の国旗を肩にしつかと結んだりりしい(ヽヽヽヽ)姿」といった言葉が辛うじて推測できる。

 印刷物としては相当に不出来ながらも、言葉ばかりはそれを取り繕うように勇ましかった。「ブツ潰(つ)ぶせアメリカ、ブツ飛ばせイギリス」「敵米英を叩(たた)き潰す必勝魂を心の奥底に秘め」といった具合だ。

 戦時経済の現実を物語る紙面と、欠乏した兵力を補うため学窓にある若者までも動員する泥沼の戦局が、図らずも相似形を描く。

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