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神奈川新聞と戦争
(166) 1944年 感情的で、おおざっぱ

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2021年1月3日(日) 05:00

「頑張りも結構だが休養も必要」と矛盾するスローガンを掲げた寿屋の広告=1944年2月25日付本紙

 1944年に入っても寿屋(後のサントリー)は広告を通じて、銃後の戦争協力を訴えた。「生活も戦ひだ!」と題し1月の本紙に掲載されたシリーズは「庭さきのたつた三坪の畑も増産の重要基地です」(19日付)「ムダを省いて貯蓄しやう」(22日付)「配給だけで間に合せやう」(25日付)といった具合だ。

 乏しい配給だけでは、満足な栄養など取れない。そんな実態を無視し「配給だけで─」と訴え続けた広告は、次第に無理が露見する。翌2月に掲載された一連の広告などは、図らずもその矛盾を体現していた。

 16日付は「量も大切だが質も落すな」と呼び掛けた。戦地に取られた労働者の代わりに不慣れな学徒が軍需工場に本格的に動員されるのは、この春のことである。18日付の「頑張りも結構だが休養も必要」も、人手不足で休暇が取れない苦境を示す(悲しいかな現代にも重なる)。19日付の「時を稼げ! 分秒も惜しめ!」は、泥沼化する戦局に生産力が追い付かない現実の裏返しともいえる。

 建前ながらも戦時生活のあるべき姿を実直に提唱し続けてきた寿屋の広告は、この辺りから冷静さを失っていく。

 「工夫だ努力だ忍耐だ それがたたかひに他ならぬ」(1月25日付)「超人的な頑張りも正しい休養があつてこそ…」(2月18日付)など、見出しにとどまらず本文にも見て取れる。

 「よしッ! やッつけろ」と題した3月25日付は「増産も貯蓄も疎開も節電も 目指すは、ただ敵撃滅の一路!」とおおざっぱ。同月26日付は、弾丸の絵に「今や敵前」の文字を書き込み「距離感を修正せよ。目に、敵の砲口を見、耳に、弾道のうなりを聞け!」と、もはや誰向けか分からない感情的な内容だった。

 27日付は「胸を張り肚(はら)に力をこめ肩をぐつとおとせ」の見出し。続く本文は「おちつきが出る。肚が据わる。判断が確かになる。強く逞(たくま)しい積極的な精神が湧き上(あが)る」と、文字通り精神主義に終始した。

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