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神奈川新聞と戦争
(160) 1943年 デザインはいいけれど

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2020年11月22日(日) 05:00

日本列島を狙う爆撃機をデザインした寿屋の広告=1943年4月9日付本紙

 寿屋(後のサントリー)は依然、多彩な献納広告を出し続けた。1943年3月15日の本紙では230億円の貯蓄目標額を掲げ「もう一(ひ)と押し」「決勝点は目の前だ」と呼び掛けた。

 同19日には「戦闘配置につけ」の文字に、木づち、製図、調理、裁縫、機械操作の五つの挿絵を添えた。その本文は、総力戦の実態を示していた。「あなたの職場が、そのまま戦場なのだ。そしてあなたはそのまま戦闘員なのだ。あなたの敵は、あなたと同じ仕事に携(たずさわ)るメリ犬共(けんども)だ。そいつらも、自国内にあつて、必死と頑張つてゐるに違ひない。負けてならうか」

 家庭生活を含めた銃後の動員を必然とし、生産力を競い、彼我の職場や家庭が「敵同士」だとする認識は、前線と銃後の境界がなくなる近代戦(銃後を対象にした空襲も同様)を象徴する。メリケンを「メリ犬」と書き、敵愾心(てきがいしん)をあおることも忘れなかった。

 同21日には「スワッ! といふとき」の見出しで「怖(おそろ)しいのは爆弾の実害より、人心の動揺だ。落着(おちつ)いて当局の指示に従ふのが何より賢明!」と記した。探照灯を図案化した単純にして優れたデザインに、寿屋のセンスがうかがえる。爆弾の方が怖いに違いないが、このように強弁した。

 4月9日には、その空襲に注意を喚起した。千島、台湾も含む列島の地図に、爆撃機の編隊、そして「ねらはれてゐる」の文字。このデザインも秀逸だ。

 「ルーズベルト一流の強がりと軽視するな」と題し「“日本々土上空で、重大行動をとるゾ”と暴言を吐きはしたものの、何ができる、とたかをくくるのが大怪我(けが)のもと! 怖(おそ)れることはないが、待つあるを恃(たの)むの、十分な用意だけは、あつて欲しい」と記した。

 「待つあるを恃む」は孫子の兵法の一節で、いつ来てもいいように備えることを意味する。その「備え」が、はたきや水にぬらした布団など、およそ備えといえないものだったことは既に述べた。空襲はこの1年半余り後に本格化する。

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