1. ホーム
  2. 連載・企画
  3. 連載
  4. K-Person
  5. 熟年の愛と別れ一人芝居に挑む

【K-Person】岸惠子さん
熟年の愛と別れ一人芝居に挑む

K-Person | 神奈川新聞 | 2016年9月4日(日) 10:06

岸惠子さん
岸惠子さん

岸惠子さん

 主人公は、「ほぼ、私自身なんです」-。4年の歳月を費やして執筆したベストセラー小説「わりなき恋」(2013年・幻冬舎)。昨年、一人芝居として披露し、今年も舞台に立つ。

 海外で活躍するドキュメンタリー作家・笙子(69歳)と、大手企業の重役・兼太(58歳)は、パリに向かう飛行機で出会う。兼太には妻子がいるものの、「最後の恋」と燃え上がり、熟した男女の恋愛や別れを描いた作品だ。

 1951年に映画デビュー。市川崑監督の作品などで銀幕を彩ってきた。57年にフランス人映画監督と結婚して渡仏。離婚後、パリと日本を行き来したが、日本には自分の居場所を見いだせずにきた。「50歳くらいになると、もう、おばあさん役をやるのが日本の役者業。もっと、一人の人間として描いてくれる役をやりたかった」。年齢を重ねた者よりも、若者が中心の日本社会。そうした価値観への不満が、筆を執る原動力になった。

 小説では、笙子と兼太の性愛も描く。「決して下品ではない。日本人はそういうもの(高齢者の性)に対する拒否反応があると思うけれど、気取るなよと言いたい」とさっそうと語る。恋愛については、「恋というのは、相手の素性をよく知らなくても、ぐっと惹(ひ)かれるものがあれば、家庭を壊さない限り、倫とか不倫とかはないと思うんです。週刊誌でさわぐのは幼稚っぽい」と、ぴしゃり。

 映像化を望んだが、笙子を演じてほしいと思える女優がなかなか見つからなかった。「私、小説だけだと不完全燃焼だったんです」。全力で取り組んだ作品だからこそ、さまざまな形で表現したい。脚本を10回以上練り直し、自ら演じる一人芝居を完成させた。

 今年、84歳。若さの秘訣(ひけつ)を問われると、「苦労が多いから年を取っている暇がない」とチャーミングにほほ笑む。自宅があるフランスでは、自然災害やテロによる社会混乱も目の当たりにしてきた。気苦労は絶えない。「いろんな所にアンテナを立てて、それに耐えるから強くなっちゃいますよ」。次作の小説も恋愛がテーマ。創作意欲は、果てない。

お気に入り

「私、(舞台の)衣装が好きなんです」。今回の舞台では、計6回の衣装替えがあるという。「この長い物語を皆さんが退屈してしまうといけないから、衣装でもちゃんと見せようと思って」。場面間での着替えは体力的にも大変だが、こだわりがある。「衣装というのは、まるごとその人が表れるでしょう」。昨年の衣装を使い回さずに、新たな衣装でも観客を楽しませる。

きし・けいこ
女優・作家。横浜市出身。県立横浜平沼高校卒。
1951年「我が家は楽し」で映画デビュー。「君の名は」(53年)「雪国」(57年)「おとうと」(60年)などに出演。著書に「巴里の空はあかね雲」(日本文芸大賞エッセー賞受賞)「ベラルーシの林檎」(日本エッセイスト・クラブ賞受賞)などのエッセー、小説「風が見ていた」(新潮社)を執筆。2011年フランス政府からフランス芸術文化勲章コマンドールを受勲。一人芝居「わりなき恋」は、24日(県立音楽堂)。問い合わせは、サンライズプロモーション電話(0570)003337。

記者の一言 さばさばしていて、かっこいい。質問に答える岸さんは、美しいばかりでなく、自分の考えをしっかりと持つ、真っすぐな女性だった。年齢をうかがって、さらに憧れが増した。こういうふうに年を重ねたいなと、誰もが思うに違いない。

 若さの秘訣を問い続けると、「家にいる私をご存じじゃないから」と岸さん。「起きて歯を磨いて、何もしないですっぴんで、ズボンはいてTシャツ着て、庭の木を切ったりお料理したりしてますよ」。それなら、私も同じ!と思うが、所作が美しく、爪の先から足の先まで色気が漂っている。「外に出る時は、お化粧もしますし、自分に対するはったりのような見えのような。これがなくなったらダメ」。見えとはったりならまねできると思う女性は多いはず。


岸惠子さん
岸惠子さん

Kパーソンに関するその他のニュース

K-Personに関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

連載に関するその他のニュース

アクセスランキング