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ムロツヨシさんに聞く 下積みが生んだ貪欲な「喜劇役者」 ムロツヨシ

K-Person | 神奈川新聞 | 2016年8月21日(日) 12:01

ムロツヨシさん
ムロツヨシさん

 組長を支える子分の役はシリアスに。ほぼ丸刈りで左右頭頂部に残した毛髪を鬼の角のように立てた失恋男は奇抜に。NHKで放送中のコント番組では、指示をされないと何もできない妖怪を演じる。真剣な表情の時もどこかに笑いを秘めている。肩書は「喜劇役者」。唯一無二の存在感で、引っ張りだこだが、活躍までには8年間の下積みがあった。

 1浪して進んだ大学を、3週間で辞め役者の道を志した。きっかけは、1本の舞台。「あちら側へ行きたい」と心が動いた。俳優養成所の費用を捻出するため、朝4時から昼まで、横浜の魚市場でマグロを運び、午後は演技を学んだ。根拠のない自信が支えだった。住んでいた大倉山から市場まで向かう時、眼前に広がった横浜の朝焼けの美しさに励まされた。

 21歳の時、貯金をはたいて「相鉄本多劇場」(2014年に閉館)を予約した。一人で臨んだ舞台。チケットは友人らの手助けで200枚全て完売したが、満員の客席はくすりともしなかった。

 役者で身を立てられず30歳は目前。地元の友人たちは家庭を持ち、仕事で足場を築いていく。焦りと不安。根拠のない自信は使い切った。

 待っていても役は来ない。できることは何か考え、ハードルを下げてみた。最初に取り組んだのは、「普通に立つこと」。人に見られていると意識せず立つことは難しかった。

 「一人で夢は成立しない」。とにかく周りを巻き込むこと。役を手に入れようと、出会った人に名刺を配った。印象づけに「ムロ」の名前を連呼した。その必死さが、「踊る大捜査線」シリーズの本広克行監督の目に留まり、扉が開いた。

 裏表のない性格が人を集める。40歳になったことしの誕生日は、俳優仲間の小栗旬、松本潤らが祝福した。俳優になり20年目の節目。21歳の自分にリベンジ(雪辱)しようと、32歳から行っている舞台「muro式.」の最新作「9.5『答え』」を、東京・中野の能楽堂で上演中だ。「お客さんが笑わなかったらと恐怖感もあるけれど、1度でうまくいかなくても、笑うまで2回、3回と続けられる欲を持ち続けたい」。今も変わらず、がむしゃらに日々を駆け抜ける。

お気に入り

 休みの日はお風呂とお酒が楽しみだったが、映画「疾風ロンド」(11月公開)の撮影で雪山に行き、撮影後も長野の野沢温泉スキー場などに出向くほどスキーにはまった。雪がない今の時期はまた無趣味に戻った。服装のこだわりは、足元の雪駄(せった)。革や布製が好み。「お友達の(俳優)新井浩文さんも履いていますよね」と声をかけると、「新井のはビーチサンダル」と違いを教えてくれた。

ムロツヨシ
 1976年、横浜市港北区生まれ。映画「サマータイムマシン・ブルース」(2005年、本広克行監督)でスクリーンデビュー。同監督の映画「交渉人 真下正義」(同年)で共演した、小泉純一郎元首相の息子で俳優の孝太郎さんとは親友。
「信じた相手なら、金を持ち逃げされても、裏切る側にならなくてよかったと思いたい。恨むぐらいなら自分を呪う。エネルギーは楽しいことに使いたい」
4歳の時に両親が離婚。預けられた祖父母の家でも、2人のけんかが絶えなかったが、「僕がふざけると、けんかが収まった。笑いがある時は、けんかがない」。笑いにこだわる理由だ。
舞台「muro式.9.5『答え』」は、9月1日まで梅若能楽学院会館(東京都中野区)。問い合わせは、アッシュ・アンド・ディ・コーポレーション電話03(5456)8130。

記者の一言 取材は、横浜市鶴見区にあるムロさんの母校に近い總持寺で行った。広大な境内で、合流までに時間がかかった。機嫌が悪いかな…と案じていたが、自ら運転してきた車を降りると、「良いところですね」と青く茂った巨木を見上げた。ありがたかった。百間廊下で行った撮影では、通路を行き交う僧侶に、「お疲れさまです」と声をかける心配りに場が和んだ。質問を返す際は、じっと目を見る。侵食してくるような感覚があった。取材後、「またお願いします」と声をかけていただいた。帰り道、「何かできる企画は」と考えている自分がいた。恐るべし、ムロマジック!!


ムロツヨシさん
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舞台「muro式.9.5『答え』」は能楽堂で行う
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