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加藤シゲアキさんに聞く 人の心に届く言葉を紡ぎたい

K-Person | 神奈川新聞 | 2016年1月17日(日) 17:29

 「本が友達と僕をつないでくれた」。高校1年生のとき、嵐やSMAPが所属する「ジャニーズ事務所」から9人組のアイドルグループ「NEWS」としてデビュー。ダンスや歌のレッスンがある放課後は、クラスメートと過ごせない。「制服姿のままカラオケに行くとか悪いことをする時期。仲間が楽しそうに見えて、孤独でしたね。話題に入れないなぁって」

 共通の話題が減り、生まれた焦り。顔を上げると、本好きの友人がいた。「世界の中心で、愛をさけぶ」など話題作を読みあさり、映画もたくさん見た。「時間を共有できなくても同じ本を読めば、感想を言い合え楽しかった。僕が最初に書いたものから最新作まで、彼にいつも一番最初に読んでもらっている。彼の言葉にはいまだにハッとさせられる」と頭をかいた。

 国語は苦手。決まった文字数で文章を要約する設問に「こんなに小さな解答欄に思いをまとめることはできない」と混乱した。しかし高3で選択した「国語表現」の授業で「書くの向いてるよ」とほめられ開眼。卒業文集用に、同性愛をテーマにした「妄想ライン」という作品を、原稿用紙4枚にしたためた。

 放送中のドラマ「傘をもたない蟻(あり)たちは」は、同名短編集に収めた6作の中から「恋愛小説(仮)」「インターセプト」「にべもなく、よるべもなく」の3作品を因数分解し再構築。一つのドラマにした。

 同ドラマでは主人公の小説家、純(桐山漣)の幼なじみとして出演。「依頼を受けたときは、正直驚きました。執筆中は純が抱えた書けない苦しみについて、『あー分かる』と感情移入していたのですが、ドラマではその苦しい思いを受け止める立場になり、漣君が訴える目が過去の僕自身の目に見えて胸にぐっと刺さりました」

 「にべもなく、よるべもなく」と名を変えた作品は「妄想ライン」がベース。〈喜びは有限、悲しみは無限〉という言葉を使った。「悩みやすい性格。悲しみを心地いいと思う性格なのか、ズーンと重いところに落ちていきがちなところがあって。それを書きたかったのかなぁ」と打ち明けた。

 「高校の3年間が、28年の人生の中で劇的な転機」と言い切る。その転機に出合った本。そして、「書くこと」が救いとなった。「人の心に届く言葉を紡ぎたい。言葉に、自らに、真剣に向き合っていきたい」

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釣りが趣味。友人を集め、釣った魚を自らおろす。自家製だれやカラスミを手作りするなど好きなものへの思いは一直線だ。ドラマの撮影では漁師町に出向いた。幼なじみを演じた桐山漣は2級小型船舶操縦士の資格を持っており、海の話題で意気投合。「現場が終わったら、釣りに行こうと約束したんです。彼も料理をするんですけど、魚は三枚におろせないみたい。レクチャーしないと」と笑った。

かとう・しげあき
作家、アイドル。1987年広島市生まれ。大阪、横浜育ち。芸能界のうそとリアルを書いたデビュー作の「ピンクとグレー」(2012年)は発行部数が42万部を突破するベストセラーに。映画化され、全国で公開されている。
11年7月からFMヨコハマでラジオ番組「SORASHIGE BOOK」(日曜日午後11時~)を担当。「3年B組金八先生」(第6シリーズ)に出演するなど俳優としてのキャリアも長い。
最新曲は、ドラマ「傘をもたない蟻たちは」(フジテレビ、土曜日午後11時40分~)の主題歌「ヒカリノシズク」。

記者の一言
 文字が映像になり迫ってくる。それが加藤さんの文章を読んだ印象だった。短編集「傘をもたない蟻たちは」を手にした際、この作品で取材をすると決めた。幕開けを飾る「染色」は自らの身体をスプレーで彩る女が登場する。心を開いた相手に触れ、手に残った色。読書は作家との対話でもある。加藤さんの思考に生で触れたら自分が何色に染まるのか、胸が高鳴った。NEWSから脱退者が出て存続が危ぶまれたとき、仲間を鼓舞しようと筆を執った。「話すとズンと落ち込んじゃうけど、もう人に話せるようになった」。過去の自分と向き合いながら開く口元。線がはっきりとした美しい口角、ピンク色の唇に、見とれる瞬間があった。自分の痛みを、読者に寄り添う文章に変える。思いの深さが心に刺さった。

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