
「あんな大惨事は忘れてはいけないと強く思うし、被災地に足を運ぶと『忘れないで』と、現地の人に必ず言われます」
東日本大震災発生から7年。二人は、津波で被災した宮城県石巻市雄勝町に毎年3月になると足を運んでいる。

参加するのは「被災地ウォークinおがつ」。同町は津波に病院がまるごとのまれるなど、甚大な被害を受けた。「ウォーク-」では、同町に住んでいた人々とともに被災現場を歩く。語り部の話に耳を傾け、復興へと歩む町並みを見守り続けている。
大震災発生から3カ月後、二人は毛布や食料など支援物資を持って東北に向かった。だが、津波で流された町の姿を見て言葉を失ったという。「被害が甚大で、どこから支援を始めたらいいのかも分かりませんでした」
知り合いの医師が石巻に移り住み医療支援を行っていることを知り、「ウォーク-」にも参加するようになった。
毎年、雄勝町の復興のシンボル「雄勝ローズファクトリーガーデン」で、「野に咲く花のように」や復興支援ソングの「花は咲く」などを歌い人々を勇気づけてきた。今月31日にリニューアルオープンするガーデンの開会式で歌声を披露する予定だ。
今年は二人にとってデビュー45周年の節目の年でもある。横浜の相鉄線沿いの西谷町で、まさとしの兄が立ち上げた音楽教室に広子がフォークソングを歌いたいと通い、二人は出会った。「結婚するって本当ですか」が大ヒットするなど、日本中にその柔らかな歌声を届けてきた。
「音楽教室の仲間が、僕らの原点です」。ヒットが生まれてからも決しておごらず、等身大で生のライブを大切にする「『ダ・カーポ』らしさ」を貫いてきた。そんな二人だったからこそ東北の人々にそっと寄り添い、受け入れられてきた。
二人が大切に歌い継ぐのは「花は咲く」だ。「地震が発生した当時は歌うことの無力さも感じたけれど、『花は咲く』を現地の人に歌ってほしいと頼まれると、やっぱり歌の力はあるなと感じます。私たちも東北の人々の心が伝わるような歌をつくって、いつかみなさんの心に届けたいです」
ダ・カーポ 横浜市出身の夫・榊原まさとしと、栃木県佐野市出身の妻・広子による夫婦デュオ。1973年の「夏の日の忘れもの」でデビュー。翌年、「結婚するって本当ですか」が大ヒットする。ドラマの主題歌「野に咲く花のように」や、童謡も歌い継ぐなど、幅広い世代を魅了している。横浜を拠点に活動し、近年は娘のフルーティスト・麻理子も加わり親子3人で活動している。
記者の一言
いつもにこやかで、おしどり夫婦のダ・カーポ。「広子はどんどん行く性格で、僕は慎重派。違うからこそいいんです」と、顔を見合わせてほほ笑む。横浜の街を題材にした歌も多く、広子さんののびやかな歌声が心にしみる。
「これからは、1年がもっと大切になる」と二人。半世紀を共に過ごしてきた二人が紡ぐ歌に、これからも感動をもらいたい。