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柿澤勇人さんに聞く 熱演の「源実朝」って、どんな人?

K-Person | 神奈川新聞 | 2022年11月7日(月) 16:00

 NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で3代将軍・源実朝を演じている。脚本家の三谷幸喜さんに「世間に認知されていない、本当の実朝像を書きたい」と言われ、当初はプレッシャーを感じていたという。

 実朝に関する最新研究や、太宰治の「右大臣実朝」など資料を読みあさった。歴史書「吾妻鏡」では、軟弱で政治に消極的な将軍として描かれるが、「自分に力がなく、母の政子や北条義時に頼るしか政治が回っていかないことをよく分かっていた。義時のように力でねじ伏せるのではなく、先回りして、誰も傷つかないように抑えていこうとするのが実朝」と分析。「この人が表に立って政治が行われていたら、いい時代になっていたに違いない」との思いを深めた。

 子どもを残さず、若くして亡くなった実朝に対し、三谷さんは同性愛者という設定を創り上げた。坂口健太郎さんが演じる北条泰時に恋の歌を贈ったものの、「間違いでは」と返される場面では、気丈に振る舞う実朝を繊細に演じた。「僕の周りでは、性的少数者と呼ばれる友人たちがいるのは当たり前なので、特別に意識して演じてはいないです。当時もきっといたと思うし」と、苦悩する実朝に共感を寄せる。

 撮影前には、実朝の墓がある寿福寺や鶴岡八幡宮といった鎌倉のゆかりの寺社を訪れた。「八幡宮も江島神社も由比ケ浜も関係があったとは。これまで知らずに歩いていました」

 有名な実朝の暗殺場面も「撮影はセットでしたけど、実際の場所をイメージしながら演技しました。階段のあの辺りだなあって」と振り返る。ただし、ひとひねりもふたひねりもある三谷さんの脚本だけあって、「皆さんが想像する実朝の最期とは違うかもしれない。台本を読んでぼろ泣きしました」と明かした。

 義時役の小栗旬さんをはじめ、「やりたいことをやってみよう、と受け入れ、一緒に芝居に向き合ってくれる。とても温かい環境だった」という。「これまでは自分を追いこむことが多く、苦しい方向に持っていってしまっていた。でも、実朝は楽しめた。確実に、僕にとってターニングポイントとなる経験でした」

かきざわ・はやと
 俳優。1987年、横浜市生まれ。2007年、劇団四季の養成所に入所し、同年ミュージカル「ジーザス・クライスト=スーパースター」でデビュー。「人間になりたがった猫」「ライオンキング」「春のめざめ」で主役を務める。09年、同劇団を退団。以後、舞台、ドラマ、映画と幅広く活躍。NHK大河ドラマは12年「平清盛」、14年「軍師官兵衛」に続き、22年「鎌倉殿の13人」で3度目の出演。27日から始まるミュージカル「東京ラブストーリー」(東京建物 Brillia HALL)に出演。

記者の一言
 4歳まで横浜で過ごした柿澤さん。「青葉台は高いビルのない住宅街で、のどかなところでしたね」と振り返る。祖父も曽祖父も清元の重要無形文化財保持者(人間国宝)という芸能一家に育った。芸事の厳しさを知るゆえに、本紙の過去のインタビューでは「自分が芸の道に進むとは思ってもいませんでした」と話している。ミュージカルで活躍しているが、真っ白な絹の直衣(のうし)をまとった実朝がよく似合う。歌人としても知られる実朝を知ろうと「マネジャーがたまたま持っていた」という「金槐和歌集」を読み込んだ。「派手さはないが、自分の感情や世の中の状況を、日常にある風景に見つけて詠むのがうまい。純朴なイメージです」。その最期が歴史的に分かっているだけに、放送から目が離せない。

 
 

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