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村山由佳さんに聞く 芯のある女性を描きたい

K-Person | 神奈川新聞 | 2022年8月30日(火) 15:12

 2021年5月から今年4月まで神奈川新聞に掲載された小説「星屑(ほしくず)」。1970年代の終わりから80年代にかけての芸能界でスターを目指すミチルと真由、そして彼女たちを育成するマネジャー・桐絵の物語だ。華やかだが競争も激しい芸能界で、困難に立ち向かっていく彼女たちの姿は読む者の心を熱くした。

 その熱い物語が、この夏単行本化された。「『ミチルと真由のCDが出たら買いたい』など、読者の方から温かい反応が返ってくるのがうれしかった」と執筆期間を振り返り「決して楽ではなかったけれど、この時代には愛着もあり、楽しく書くことができました」とほほ笑む。

 心を砕いたのは、ミチルと真由が心を通わせていく過程や、ミチルの圧倒的な才能に劣等感を感じる真由が1人でステージに立つ勇気を獲得していく心理描写。登場人物たちによる激しい言葉の応酬についても細部まで表現を磨いた。「その都度音読しながら確認するのですが、強い言葉を読むたびに、膝の上の飼い猫が驚いた顔をしていました」と笑う。

「星屑」(幻冬舎・1980円)

 幾多の衝突や葛藤を乗り越えた少女たちは、物語のラストで光り輝くステージに立つ。「スター自身はもちろん、スターを支える人たちにも自分の物語がある。大勢の観客がいて初めてスターが成立するんだ、という意味を込めて『星屑』というタイトルにしたんです」

 語り手である桐絵は「打算がなく、無心で仕事に打ち込む人」。男性優位の社会で能力を発揮できず、鬱屈を抱える女性の奮闘を描いた「お仕事小説」という側面も持つ作品となった。「特殊な設定だけれど、働く女性という視点から見ると現代社会もあまり変わっておらず、切実に読んでもらえたかもしれません」。

 桐絵はプライベートの時間を削ってでもミチルをスターに育てようとする。「長時間労働を強制されることは間違っていると思いますが、たとえば芸術の世界などでは、理想とするものを生み出すために昼夜を問わず時間をささげたいというケースがあり得る。常に『正しさ』を追求するだけでは世界はつまらなくなると思うし、常識を越える何かは生まれないのではないでしょうか」

 恋愛小説の名手として活躍してきたが近年は、婦人解放運動家・伊藤野枝の生涯を描いた「風よ あらしよ」でも髙い評価を受けた。「自分を自分たらしめている背骨のようなものを譲らず、大事にしている人は魅力的。今後も芯のある女性を描いていきたいですね」

むらやま・ゆか
 作家。1964年、東京都生まれ。93年「天使の卵―エンジェルス・エッグ」で第6回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年「星々の舟」で第129回直木賞受賞。09年「ダブル・ファンタジー」で第4回中央公論文芸賞、第16回島清恋愛文学賞、第22回柴田錬三郎賞を受賞。21年「風よ あらしよ」で第55回吉川英治文学賞受賞。同作はドラマ化され、9月からNHKBSプレミアムなどで放送予定。

記者の一言
   文化部員たちも夢中で読んだ「星屑」。桐絵たちが窮地に陥った時、助け舟を出してくれる先輩アイドルの「ピンキーガールズ」やベテラン歌手の「城田真里子」ら、頼もしい女性たちの姿にしびれた。「女性たちのシスターフッド(連帯)も描きたかった」という村山さんの言葉に納得。ちなみに、城田真里子のモデルの1人は熊本出身で「雨の慕情」をヒットさせた“あの方”だそうだ。これまた納得。取材当日は「星屑」をイメージした着物で対応して下さった。モダンでおしゃれな帯にも注目してほしい。

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