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柳家喬太郎さんに聞く あやしい町で生きる人間を描きたい

K-Person | 神奈川新聞 | 2022年3月28日(月) 18:20

柳家喬太郎さん

 古典の名手でありながら、自ら創作した新作落語でも見る者の心をつかみ、余韻を残す。パンチ力のある「まくら」を愛する落語ファンも少なくない。紛れもなく、現代落語界の大看板のひとりだ。

 これまで発表した新作落語は名作ぞろい。登場人物の巧妙な演じ分けが笑いを誘う「午後の保健室」や、心がじんわり温かくなる「ハワイの雪」、江戸川乱歩の小説をダークな落語に仕立てた「赤い部屋」など、多彩な作品で観客を魅了し続けてきた。5月12、13日に開催される、横浜にぎわい座(横浜市中区)20周年記念の独演会では、いずれも横浜を舞台にした作品「純情日記横浜篇(へん)」「純情日記港崎(みよざき)篇」を披露する。

 「横浜篇」は日本大学落語研究会在籍中、初めてストーリー仕立ての落語を作ろうと挑戦した作品。「書くのに苦心したけれど、在学中に出場した大会で評価してもらえて、落語家になる一つのきっかけにもなった。自分にとっては特別な話です」とかみしめるように話す。近年は柳家わさびや桂枝太郎ら他の落語家も演じる定番のネタとなりつつあり「もう自分の手を離れた感じ。携帯電話もないような時代の若者のラブストーリーを、若手の噺家(はなしか)がどう演じるのか、いつも楽しみなんです」と笑顔を見せる。

 「新作は今の時代を舞台に作るから、逆にすぐに古くなるのが怖いところ」と明かす。「流行語などは廃れるのも早い。『横浜篇』はどの年代にも届くように片思いの話にしたのですが、今でもわさび達が演じてくれているということは、時間の経過に耐えうるテーマだったという証左のようでうれしいです」

 「港崎篇」は2009年、横浜開港150年記念としてにぎわい座の依頼を受け、創作・初披露した作品。1866年、関内の町を焼き尽くした「豚屋火事」に着想を得た話だ。港崎遊郭での悲恋と、「横浜篇」の登場人物のその後を織り交ぜた大作は大きな話題となった。「幕末の話は新作でも落語らしくまとまる。でも、開港後もこの町で生きてきた人たちのことを描きたかったんです」

 「おしゃれな横浜」は描かないと決めている。「あやしい匂いのする一角があるから町は輝く。寄席も、いかがわしい場所にあることが多いでしょう」とニヤリ。「少年・青年期を横浜で過ごしたし、思い出の場所もあるけれど、どこか冷静な視点でこの町を見ている。だから落語のネタにできるのかもしれません」

「柳家喬太郎独演会 純情日記港崎篇」5月12、13日午後7時開演。全席指定3200円、抽選販売。4月8日から申し込み受付。問い合わせは横浜にぎわい座、電話045(231)2515。

やなぎや・きょうたろう
 落語家。1963年東京都生まれ。小学校から20代後半までを横浜で過ごす。日本大学で落語研究会に入部し関東大会で優勝。書店勤務を経て、89年柳家さん喬に入門。93年に二つ目、2000年に真打ち昇進。04年度から3年連続で国立演芸場花形演芸大賞を受賞。近年は映画「浜の朝日の嘘つきどもと」(21年)やTBSのドラマ「妻、小学生になる。」(22年)などに出演し、俳優としても活躍している。

記者の一言
 2008年1月27日のKパーソンで喬太郎師匠を取材したT部長から「師匠は絵がうまい。色紙にサインとイラストを描いてもらうように」と指令が。取材後にお願いすると、シウマイ弁当を食べるご自身のイラストを快く描いてくださった。一目で何のお弁当かわかる、その腕前に仰天した。  「40年以上食べている」というシウマイ弁当にはしっかり胃袋をつかまれているようで「崎陽軒は影で横浜を支配する、悪の組織ですよ…」との言葉に笑ってしまった。色紙は近日中に掲載予定。お楽しみに。

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