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黒沢あすかさんに聞く 一人にならないで新境地の役に思い

K-Person | 神奈川新聞 | 2022年2月28日(月) 11:00

黒沢あすかさん

 失踪した息子を待ちながら、息子を知るという身寄りがない青年を自宅のアパ-トに招き入れ、息子の部屋に住まわせるシングルマザ-の恵。2人は親子であり、恋人でもあるような不思議な関係になるが、恵には誰にも言えない秘密があった─。

 3月5日から全国で順次公開される中村真夕監督の新作映画「親密な他人」で、息子への狂気じみた執着を抱え、面影を求め続ける恵を演じる。「かわいそうな女性で終わらせるのでなく、恵をちゃんと救ってあげたいと思い取り組んだ」と語る。

 11歳でのデビュ-以来、多くの映画やドラマに出演し、「強い女性」を演じてきた。今回は、抑えた感情の隙間から、少女のような幼さや、成熟した女性の色気が揺らぎ見える、これまでにない役となった。

 「役作りは一切しなかった」という。「自分自身も家庭を持ち、女優として挫折も味わい、病気で倒れたこともあった。そうした経験をエネルギ-にして向き合えばいいと」。ただ、演じる上で「救う側の立場」を心に刻み、役に飲み込まれないように心がけた。

 実生活では3人の息子を育てる。母親の立場から、演じながら「彼女の境遇に寄り添える人、相談に乗れる存在がいたら変わっていたのではないか」と感じたという。コロナ禍で人と人の関係が引きはがされ、孤立を深める人も増えている。「一人になってはいけない。周りの誰でもいい。弱みを見せたり、泣き言をいってもいい。絶対に声を上げた方がいい」と役を通して訴える。

 これまでにない抑制した演技で臨んだ一作は、キャリアにとっても重要な作品となった。最近は仕事のオファ-も減り「仕方ない」と受け入れていたというが「再スタ-トを切れると自信が持てた」。今後はコメディ-への挑戦や、戦争に巻き込まれた女性についての朗読劇に取り組みたいという。「戦争では男性ばかりに焦点が当たるが、女性たちも何かと引き換えに闘った。きちんと伝えたい」と目を輝かせる。

 21歳まで藤沢市で過ごした。幼いころ、引地川に沿って自転車を立ちこぎしながら海に向かったことが思い出深いという。「帰り道はマジックアワ-。後ろからも前からも、夜が押し寄せてくる。金色が混じった赤のような、紫のような空が黒く変わっていく。『うわあ』と思いながら」と楽しげに振り返る。現在も同市に実家があり訪れている。「いい具合に都会と自然が混在し、ほっとできる」。土を触ることでバランスを保とうと、自宅でも、ガ-デニングを楽しんでいるという。

くろさわ・あすか
 俳優。1971年藤沢市出身。90年に「ほしをつぐもの」(小水一男監督)で映画デビュ-。2003年公開の「六月の蛇」(塚本晋也監督)で第23回ポルト国際映画祭最優秀主演女優賞、第13回東京スポ-ツ映画大賞主演女優賞、11年に「冷たい熱帯魚」(園子温監督)で第33回ヨコハマ映画祭助演女優賞、19年に「積むさおり」(梅沢壮一監督)でサンディエゴの「HORRIBLE IMAGININGS FILM FESTIVAL2019」短編部門主演女優賞を受賞。主な出演作は「嫌われ松子の一生」(06年、中島哲也監督)、「ヒミズ」(12年、園子温監督)など。

記者の一言
 きっぱりとした強い女性。黒沢さんといえばこうしたイメ-ジがあった。くだらない質問をしたらあきれられるかも─。とドキドキしながら対面すると、開口一番「うれしいです、神奈川新聞!神奈川出身だし」と満面の笑み。果たしてほがらかでよく笑う、気持ちのよい人だった。ブログを見ると新聞をよく読んでいる様子。聞くと「夫の影響で読んでいます。40代に入って自分の中身が薄いと突きつけられ、50代までに読むことを身につけないと笑ってすまされないと思い」。同年代として、向上し続ける姿勢に頭が下がる。コメディ-に挑戦したいとのことだがきっと合うと思った。楽しみです。

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