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柳家三三さんに聞く 端正な語り口 講談からの学びも

K-Person | 神奈川新聞 | 2021年11月14日(日) 13:00

柳家三三さん

 すらりとした着物姿が舞台に現れると、客席の熱がぐっと上がった。端正な語り口に心地よく耳を傾けていると、ご隠居さんと熊さんがとぼけた会話を交わす長屋に、いつの間にか自分も座っていることに気付く。紛れもなく、現在の落語界を代表する正統派の噺家(はなしか)だ。

 2022年2月、出身地でもある小田原市の、小田原三の丸ホール開館記念事業の一環である初春公演に登場する。共演するのは、当代随一の人気講談師・神田伯山さん。「舞台に登場した瞬間に観客の関心を引きつける魅力がある講談師。2月の公演は舞台のセットにも工夫を凝らしたいと思っているので、共演が楽しみです」と期待を込める。

 実は自身も講談好きで、本格的な稽古に打ち込んでいた。「一時期は落語より熱心だったかもしれません」と笑う。講談ネタを落語に仕立てた噺はもちろんだが「緩急や強弱の意識、言葉を整理して端的に伝えることなど、落語そのものに生かされている部分も多いです」。

(撮影:橘蓮二) 小田原三の丸ホール開館記念事業「柳家三三小田原落語会 初春公演」2月5日午後1時開演、全席指定、S席3500円など(チケット発売は1月初旬予定)。問い合わせは同ホール電話0465(20)4152。

 「聞いていて気持ち良くて楽しい、というフィーリング」で10代目柳家小三治師匠に弟子入りしたのは1993年。「まくらの小三治」とも呼ばれ、磨き上げられた話芸で愛された師匠は先月、永遠に高座を去った。「僕の落語に対して『こう感じたよ』と言われたことは何度かありましたが、どうするかは自分で考えなくてはならない。口で教えずに、黙って生きている姿を見せるんです」。生涯現役を貫いた師匠だったのだろう。

 昨年春からのコロナ禍では多くの公演が中止になり「しょうがねえなあ、と思っていたけれど、見てくれる人がいるなら」と20年3月から無観客ライブ配信を開始。現在は毎月1回、有観客の独演会を収録した動画を配信している。観客のいない状況では「理想とする形の落語」が実現できたというが、それは同時に「お客さんの反応が、自分の中から想定外の言葉を引き出していた」ことに改めて気付く機会にもなったと振り返る。

 所属する落語協会などが主催した、都内の寄席を支援するためのクラウドファンディングでは1億円の支援が集まった。「ありがたいですけど、落語は無理やり保護して残すものじゃない。必要がなくなれば消えるものだと思っています」と、その姿勢は軽やかで、粋だ。「僕の高座が面白くても、それは僕の手柄じゃない。お客さんにとって今が楽しい時間なんだな、と受け止めているんです」

やなぎや・さんざ
 落語家。1974年小田原市生まれ。県立小田原高校卒業。93年、18歳で柳家小三治に入門。2006年真打ち昇進。07年第62回文化庁芸術祭大衆芸能部門新人賞、16年第66回文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞(大衆芸能部門)など受賞多数。「しゃべれどもしゃべれども」(07)などの映画や漫画で落語指導・監修も手がける。20年に初のエッセー集「前略、高座から─。」を出版した。

記者の一言
 取材は、小三治師匠がご存命の9月3日に行われた。「師匠には1回も稽古してもらったことはない。でも、好きで入ったんなら分かるだろう、ということだろうと思うんですよね」と語る表情に敬愛の情がにじんでいたことが思い出される。

 小田原の話もたくさん聞かせていただいた。昨年発行されたエッセー集には「城好きが少々高じた」師匠らしい小田原城の描写も。「天守閣だけじゃなく、裏の土手もお城の一部なんですけどね…」。次の機会にはお城の話も詳しくお聞きしたい。

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